パイオニア、自動運転技術「ライダー」でサプライヤーの雄となるか

2019年4月30日 19:15

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パイオニア「3D-LiDAR SHORT」(画像: パイオニアの発表資料より)

パイオニア「3D-LiDAR SHORT」(画像: パイオニアの発表資料より)[写真拡大]

 カラオケで一世を風靡したレーザーディスクのパイオニアが、車載用MEMSミラー方式LiDAR(Light Detection and Ranging)で一躍、自動運転技術の中心的サプライヤーに躍り出るようだ。レーザーを使ったデジタルイメージ手法として注目されている「ライダー(LiDAR)」だが、現在開発されてきている機械式では1台300万円前後と高額で、普及の障害となっていた。そこでパイオニアは、レーザーディスクの開発経験を生かして、MEMS (Micro-Electro-Mechanical Systems)技術を応用した電磁駆動式のミラーでライダーを作り上げた。

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 ライダーの原理を簡単に言えば、赤外線レーザーを発して、その反射波でイメージ画像を作り上げる技術だ。つまり自動車から赤外線レーザーを発し、反射波で周囲の物体の形を捉え、AIで画像認識して、周囲の物理的状況を把握する技術がライダーだ。しかしそのためには、赤外線レーザーを発する半導体を少なくとも6つ必要としていた。

 そこでパイオニアは、1つの半導体からのレーザーをミラーで反射させることで、小型化を可能とした。さらにミラーの駆動方式を、メカニカルから電磁誘導として小型化し車載を可能とし、1台当たり1万円ほどにまでコストダウンできる見通しを立てた。これは、自動運転に欠かせないセンサー技術を進歩させて、自動運転車の実用化に向けて大きな力となる技術だ。

 その昔、パイオニアがオーディオやGPSで活気を呈していたころ、レーザーディスクでカラオケシステムを作る一方、DVDのようなパソコンに外部記憶装置の開発をしており、レーザー記憶装置の周辺ソフトの開発を頼まれたことがある。レーザーディスクには違いなかったが、焼き切る方法でDVD-Rのような働きをするものだった。焼き切ってしまうので「R(読み取り)」専用となるのだが、ソフトで「RW(読み書き)」のようにすることはできた。またディスクを切りくずが出るほど焼き切るので、確実に記憶できるメリットはあった。しかしそれからCD-R、DVD-Rなどが出現し、パイオニアのものは大きさもかなりあったので廃れてしまったのだ。レーザーカラオケは、レーザーディスクの1応用例であったという位置づけが正しいようだ。

 東芝が、家電で韓国メーカーに追い落とされて畑違いの原子力に進出し、東日本大震災に遭遇したのも不運ではある。シャープも液晶技術を生かした応用を考えていたが、間に合わなかった。今回のパイオニアの「ライダー」も自社技術の応用であり、もしヒットしてパイオニアが再建できれば、これは幸運である。何事も運不運であるといえる。しかしあきらめずに開発し続けるのも、一つの道だ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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