海水淡水化のコスト削減に寄与するセラミック製吸着フィルタを開発、日立金属

2019年2月12日 16:30

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開発フィルタの概要(日立金属発表資料より)

開発フィルタの概要(日立金属発表資料より)[写真拡大]

 日立金属は12日、逆浸透膜法(RO)による海水淡水化プロセスにて、造水コストに大きな影響を与えていたRO膜の目詰まり除去操作を大幅に軽減できる、ハニカム構造セラミック吸着フィルタを開発したことを発表した。

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 世界規模での人口増加や気候変動などにより、水の需給バランスがひっ迫しているため、近年、大量にある海水から飲める水を作ることができる海水淡水化プラントが注目され、普及し始めている。海水淡水化でメジャーな手法であるRO膜法は、水分子しか通さないRO膜で海水をろ過して水を作ることができる。この方法では、海水中に含まれるプランクトンや有機物などを事前に除去しないと、RO膜が目詰まりしてしまう。そのため、家庭用浄水器などで広く使われている精密ろ過膜などを用いてプランクトンなどの粒子状物質を除去し、通過した微小な有機物などの目詰まり物質は、定期的にろ過プロセスを止めて膜を洗浄し除去していた。

 従来のRO法海水淡水化では、海水中の夾雑物質除去が煩雑で、これが造水コストを増大させていた。今回開発されたセラミックス吸着フィルタは、ハニカム構造の多孔質セラミックの表面に吸着材をコーティングしたもので、海水中に溶存した有機物を効率よく吸着除去できる。シンガポールのNanyang Technological Universityと共同で実施した実証試験では、海水淡水化でRO膜の洗浄までに必要な時間を、従来の2.3倍にまで延ばせることが確認されたという。

 開発したフィルタによるRO膜目詰まりの軽減は、膜の洗浄頻度削減による稼働率向上だけでなく、膜ろ過時の操作圧力の上昇抑制による運転エネルギー削減効果もあり、大幅な造水コストの削減が期待される。今後日立金属では、実用化に向けた開発を加速して、水処理ビジネスの中心であるシンガポールでビジネスを開始するという。

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