キャッシュレス決済はどうすれば増える?推進協議会が始動

2018年8月23日 18:51

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 キャッシュレス社会の円滑な実現を目指した産学官の連携によるキャッシュレス推進協議会の初会合が9日、東京都千代田区で開催され、QRコード利用の標準化を目指して銀行やコンビニなどおよそ130の企業・団体から、約250人の担当者が集合した。

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 経済産業省はQRコードの読取り方式の規格の在り方についての案を提示し、2019年3月までに論議を集約して規格統一を進める。25年と設定した「キャッシュレス決済」比率を40%まで引き上げる目標の達成を、より確実なものにするため、議論に弾みをつけたい考えだ。

 QRコード決済の際の読取り方式は、消費者がスマートフォン(スマホ)画面にQRコードを表示して店舗側に読み取ってもらうなどの方法がある。

 現在はQRコード決済に、LINEやヤフー、NTTドコモなど多くの企業が参入して、規格が乱立しかねない状態である。日本に多数のQRコード決済規格が無秩序に誕生すると、消費者や店舗の利便性が制約される懸念があり、普及推進の障害となることが否定できない。国民経済の大改革を円滑に進めるためには適切な音頭取りが必要ということだ。政府はその上で、決済基盤を計画に沿って提供する事業者に補助金の支給を検討し、中小の店舗には時限的に決済額に応じた税制の優遇策を検討することとした。実現すれば、推進への大きなインセンティブになることは間違いない。

 日本のキャッシュレス決済比率は未だ20%に満たず、キャッシュレス先進国の後塵を拝している状況にある。海外からの観光客が増加するとともに、キャッシュレス決済が可能な店舗が少なすぎるとのクレームも目立ち、観光立国の観点からも大きな問題となっていた。2年後には東京五輪も迫っている。

 中国ではキャッシュレス決済比率が非常に高い。紙幣の損耗が激しいとか、ニセ札が横行して自衛する必要に迫られた面が強いという説もあるが、QRコード決済は店舗にも消費者にも負担が少なかったことから瞬く間に普及した。今では“饅頭1つ”買うのでもQRコード決済が当たり前で、現金は嫌がられたり、使用できなかったりということも誇張ではないようだ。

 キャッシュレス決済の方法としては、デビットカード、QRコード、クレジットカード、交通系の非接触型ICカード、プリペイドカードなどが考えられるが、コストやインフラなどを比較検討すると、QRコードが一番取り組みやすいことは明白だ。若年層や高齢者を除くと、社会の中核を構成する年齢層でスマホを持たない人は今や少数派と言っても過言でなく、新たにカード等を作成させる必要がない。会員の年会費や加盟店の手数料負担というバリアがなく心理的な抵抗が少ない(加盟店の手数料はLINEとヤフーが実質3年間無料を打ち出している)。読取装置を設備するなどの投資負担がない。店舗等によって使い分ける煩わしさがない等々のメリットは明らかに他の方式を凌駕している。

 普及が遅れたことを奇禍として、国内のQRコードの規格が統一されQR決済の返金や返品手順の統一も実現されれば、使い勝手はさらに向上する。条件を整えて、国際規格策定への旗を振る所まで到達できれば、御の字であろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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