スマホの「2年・4年縛り」、総務省と公取委が是正指導でどう変わる?

2018年8月9日 12:30

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 携帯キャリアには、顧客の契約をつなぎとめる「2年縛り」「4年縛り」という魔法のアイテムがある。

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 「2年縛り」は、2年間利用を継続することを条件として基本料金を割り引くシステムだ。2年間の基本料金が割り引かれるため利用者は多い。しかし、2年間の契約が満了した後の2カ月間(25カ月~26カ月目)を更新月と限定しているため、契約の満了前に解約すると違約金が発生することと、更新月に解約すると通信料が請求されるシステムが問題視されている。更新月の2カ月間を経過すると、自動的に新たな2年間の契約がスタートしたことになるので、27カ月目以降の解約は、また違約金の対象となる。

 携帯の基本料金は高額なため、割引してもらうために「2年縛り」を選択するのは消費者の自衛策なのだが、携帯キャリアにとっては解約防止のシステムとして非常に魅力的な制度である。一般的に言って、ユーザーが契約の切り替えをちょうど2年後に意識するとは限らないため、ユーザーにとっては自由な乗り換えが制約されるシステムと言える。

 総務省がこのシステムを「利用者の自由な選択の機会を阻む」として問題視するのは当然で、大手3社に対して違約金や追加料金を求めずに解約に応じるよう求めている。

 「4年縛り」は、スマートフォン(スマホ)の本体代金を4年間の分割払いにすることを条件にして、スマホの代金を実質半額にするシステムだ。2年後にスマホを買い替える場合には、新たに4年分割プランに入ることを条件に、旧スマホに残った2年分の支払いを免除する。実質半額でスマホを“利用できる”のが利点と言えるが、「2年後に再度4年契約に加入する」ことと「使っていたスマホは下取りに出す」ことが条件のため、ユーザーはスマホのオーナーと言うよりはレンタルを利用しているような立場に置かれる。

 確かに半額で利用できているような感じはあるが、機種代金が半額になることに惹かれて契約したユーザーが、その機種に惚れ込んだ場合にどうするか?購入時に割引してもらったような感じになれるか、2年後に下取りに出すかの違いだ。決定的に違うのはユーザー自身の意志が反映されているか、いないかである。

 KDDI(au)は、1日の18年4~6月期連結決算の説明会で、総務省と公正取引委員会に指摘を受けていた2年縛りと4年縛りを見直すことを明らかにした。4年縛りは、KDDIでは「アップグレードプログラムEX」などの名称で提供されていたが、このプログラムへの再加入が残債免除の条件であることが、ユーザーの拘束性が高いと公正取引委員会が問題視した。KDDIはプログラムへの再加入条件を「システム対応が可能になった時点で速やかに」撤廃するとした。残債免除の条件に旧端末の下取りが入っている点も公正取引委員会は問題視していたが、公正取引委員会とも議論して対応する考えなので、確定的なことは言えないという姿勢に止まった。

 ソフトバンクも、「半額サポート」プランと呼んでいた「4年縛り」契約の見直しを6日に表明した。但し、KDDI同様再加入条件は撤廃するが、使用していたスマホを下取りに出すことについては明確な発表はなく曖昧なままだ。

 携帯キャリアの中でNTTドコモには「4年縛り」はない。

 2年縛りは契約期間を2年間としながらも、実質24カ月分以上になる料金負担を総務庁が問題視し、6月には「2年契約満了時までの違約金と25カ月目の通信料金のどちらも支払わず解約できる」ことを、19年3月末までに対応するように求めた行政指導を行った。

 KDDIは契約を解除できる期間に、現行の25カ月目と26カ月目に「24カ月目」を加えて3カ月間に拡大する考えだ。システム対応のため、来春に対応することで検討中とのことで、総務省の要請にも適っている。

 ソフトバンクは解除料が不要な更新期間を一定期間前倒しする方向で検討中といい、NTTドコモも「24カ月目か同月の後半2週間などに対象期間を拡大する」ことを検討中だ。最終的には大手3社の足並みがそろう可能性が高い。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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