あのF1サウンドが消えてなくなる?ファンをとるか、エネルギー効率をとるか?

2018年2月27日 20:04

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 自動車レースの最高峰であるフォーミュラ1(通称F1)に参戦しているルノーチームにおいて、あのF1サウンドについての論議がされているようである。

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 F1はスピードを競うレースで、ファンにとっては世界最高の自動車パフォーマンスを見ることができるエンタテインメントである。これまでの最高速度は、2005年イタリアグランプリでファン・パブロ・モントーヤが出した時速372.6km。目の前をそのあり得ないスピードで走り抜けるスリルあるマシンに、また同時にダイナミックなエンジンサウンドに興奮するファンが世界中に多くいる。

 しかし時代の趨勢で、そのサウンドを必要以上にダイナミックなものにしなくてもよいとの意見も、F1技術者の中から出始めているのである。

 F1レースの場はエンタテインメントである一方、自動車メーカーの最前線の研究所でもある。世界最高峰技術の粋を集めて、走行実験を繰り返し行っている場でもあるのだ。だから、ルノーのエンジニアは「エンジンの排気音を大きくする試みは、ユニットのエネルギー効率に悪影響を及ぼし、さらには、ハイブリッドの技術的思想や市販車との関連性そのものにも疑問を投げかけることになる」と語っている。

 F1マシンの詳しい技術的なことはすべてが公表されるわけではないからわからない。最高峰のF1エンジニアともなれば、エネルギー効率を落としてまでなぜサウンドを出すことを重視するのかに、技術者として疑問を持つのは当たり前だと言える。サウンドにこだわるのは、“懐古的な気まぐれにすぎない”とも言っている。

 しかし一方で、エンジン音がないF1となってしまうのなら、究極的には世界最高峰の電気自動車のスピードレース「フォーミュラE」と変わらなくなってしまうのではないか。そうしたら、エンタテインメントとしてこれまでのファンをF1レースにつなぎとめることができるだろうか?かつてミハエル・シューマッハからの要請でフェラーリに引き抜かれたこともある敏腕責任者のロス・ブラウンも、そのことを心配していると思われる。彼は、ファンの要望に応えるため、新しいエンジンに迫力あるサウンドを求めている。F1は元来エンタテインメントであり、F1ファンがいなければ成り立たない。ファンがいなくなってしまえば、自動車メーカーの最前線の研究所というフィールドも失いかねないのだ。

 しかしこれはどちらの言い分が正しいのかではないだろう。将来「フォーミュラ1」「フォーミュラE」どちらに集約されるのか、またどちらとも残るのかは、自動車業界「100年に1度の変革」のゴールが見えてくれば、おのずと決まってくるのかもしれない。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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