日本がもっと自慢していい「遊星ギア」のトヨタ・プリウスHVシステム

2018年1月13日 10:37

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トヨタの「プリウス」。(写真: トヨタ自動車の発表資料より)

トヨタの「プリウス」。(写真: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]

 昨年10月に米で発表された2017年1~9月のハイブリッド車販売実績では、最も売れたハイブリッド車はやはりトヨタ・プリウスシリーズだった。しかし、前年同期比では21%減で、そのかわり「RAV4」や「ハイランダー」などSUV勢が数字を伸ばしている。これらトヨタ車のハイブリッドシステムの要は「遊星ギア(プラネタリーギア)」と言われるもので、世界に誇る優れたなシステムであるのだ。

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■後を追ったホンダの開発者も唸った

 当時すぐ後を追ったホンダ・フィットのハイブリッドシステムを任された開発者は、最初はトヨタ方式を徹底的に研究したのだが、「調べれば調べるほど良くできている。常にエンジンを最高効率のところで使える。完璧だ。」とその巧妙さに脱帽したという。

 トヨタのハイブリッドシステム(THS)は、2つのモーターとエンジンが、常時プラネタリーギア(遊星歯車)を通じてつながっており、片方が上がると片方が下がりバランスを取るというやじろべえ式。つまり、プラネタリーギアは動力配分の要でトルクミックス機構ともいい、これが太陽のまわりをギアが衛星のように回る構造を持っていることからこう呼ばれている。入力軸と出力軸を同軸上に配置できるため、コンパクトな構成にしやすく、エンジンの出力を車輪駆動と発電機駆動に振り分けるほか、発電機の抵抗を換えることで回転数を制御して無段階変速機としても機能するのだ。そのため「電気式CVT」という呼び名ができた。筆者もこれを最初に見た時は、変速機はどこにある??と頭をひねっていたのだが、一体型であることに気づいたときは非常に驚いた。

 コンパクトであることは、エンジンの他モーター2つ、インバーターにバッテリーを狭いエンジンルームに収めるのに非常に需要なポイントである。

■欧州がEVシフトを打ち出したわけは「遊星ギア」電気式CVT

 もちろん、このシステムに付随する技術はすべてパテント(特許)で押さえられている。よって、欧州メーカーはこのトヨタHVシステム(THS)の潜在力にのどから手が出るほど興味を示しているが、トヨタとの提携なしにはこの技術を使えない状態で、仕方なく他の仕組みを模索してきたわけだ。未だ追随できたとは言えないだろう。そのため、VWのディーゼル不正発覚後はHVを飛び越える策をめぐらし、トヨタのHVに対抗しているのだが、燃費性能では対抗できていない。

 現に、2017年年末のニュースでも、欧州でトヨタのHV車が快走を続けているとあり、欧州でのHV比率が50%に迫る勢いだという。ディーゼル車の不正の発覚で、やむを得ずEVシフトを高らかに打ち出した欧州だが、ドイツではEV購入奨励金があっても、政府が提示した額のわずか7%程度しか使われておらず、EV購入が思うように進んでいないのが現状。本格的なEVシフトへの過渡期にトヨタが攻勢をかけている。「遊星ギア」の発明は、世界の自動車産業を動かしているのだ。PHEVでも使われていくだろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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