コウモリのバイオソナーを情報通信学に応用 火星探査で成果

2017年12月28日 07:59

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●コウモリの習性が情報通信学にヒントを与える

 コウモリが持つバイオソナーのシステムを利用して、惑星観測の新たな技術が開発されそうだ。イタリアはトレント大学の情報通信学教授ロレンツォ・ブルッツォーネとレオナルド・カッレールは、コウモリの習性からインスピレーションを得て2次元レーダーから得られる画像処理の改良にこぎ着けた。この新技術は、まず火星の地下の調査に応用され成功した。また、雑誌「Nature Communications」に詳しい研究結果が掲載されている。

●コウモリの発するふたつの超音波

 「自然」は「技術」を凌駕することがたびたびある。トレント大学の2教授が科学雑誌「Nature Communications」に掲載した記事の主役は、コウモリである。

 コウモリやイルカは超音波を発し、その反響で物体の存在を感知する。コウモリの場合は、その反響から物体の位置、距離、物体の正体まで感知ができる。

 コウモリはまずふたつの超音波を発する。そして、返ってくるエコーから物体の情報を得るのだが、物体の詳細な情報を左右の耳で受信する時間差からも収集していることが明らかになった。一瞬のこの動作で、コウモリは相手が植物か獲物かを即座に理解できるという。

 人類が開発した最新技術も、コウモリが持つこの能力のレベルにはいたっていない。

●ふたつの超音波の原理を電磁波に応用

 トレント大学の2教授によれば、音波と電磁波はその動きに相似性があるという。

 そのため、太陽系の惑星の地殻を調査するにあたりより詳細な情報を確保するために、コウモリと同様にふたつの超音波を応用する実験を行った。

 そしてこのシステムは、惑星と衛星双方の表面と地下からの反響を識別するために非常に有効であることが判明した。つまりコウモリのメカニズムは、惑星探査のレーダーから発したエコーが正確にどこから戻ってくるかを特定することを可能にしたのである。現在、エコーの発信場所が特定できないために学者たちが解釈困難としているデータも、新たな技術の開発により容易になる可能性がある。

●火星の観測に実用化された新技術

 トレント大学の研究チームは、実験的に新技術を応用して火星の観測を行った。

 その結果、これまでは物理学者が多くの時間を割いて得ていた解析結果を、自動的に短時間で得られることが実証された。

 データ解析の分野において、これは非常に大きな成功といえる。今後、より正確で詳細な惑星測定のためのレーダーシステムの開発に、大きく貢献する成功である。

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