大成建設、強靭な耐久性を持った木造壁を開発 伝統建築への応用が視野

2017年11月24日 07:26

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技術概要。(画像:大成建設発表資料より)

技術概要。(画像:大成建設発表資料より)[写真拡大]

 日本古来の伝統建築といえば木造である。それが全てではないにせよ、重要であることは間違いない。ただ、誰もが知るように、木造建築は、弱い。そこで、大成建設が開発したのが、伝統建築の新築・再建などの際に応用可能な、強靭な耐久力を持った木造の壁である。

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 大成建設は現在、神奈川県横浜市の日野山徳恩寺本堂、並びに東京都世田谷区の九品仏淨眞寺閻魔堂の新築工事を請け負っている。新しい工法が、ここで用いられる。

 近年、大震災により、寺院や鐘楼などが倒壊する例が相次いだ。瓦が重く、壁が弱いためである。瓦を用いず木で屋根を葺くという工法も、歴史的にはあるが、美観その他の問題があるため、この場合では代替手段たりえない。

 現代の日本で、現実にはどうしているかというと、部分的に鉄骨を組み込んで補強している例などが多いという。だが、大成建設が今回考案したのは、基本的には木造でありながら、高い剛性を持った、新しい壁だ。

 種類が2つある。まず1つは、T-WOOD真壁。真壁というのは、梁と柱の間に壁板をはめ込み、釘で止める、日本の伝統建築様式である。T-WOOD真壁は、基本的には真壁の一種だが、長いビスを用い、また、柱の中に高強度のPC鋼棒を拝することで、耐震性能を高めたものである。耐震設計上、従来の三分の一の壁全長で、必要とされる性能を実現できるという。

 もう一つはT-WOOD組み板壁だ。金物を一切使用しない、柱の溝に壁板をはめ込んで構築する工法を、伝統的に、「落とし込み板壁」という。T-WOOD組み板壁はこの応用であり、やはり、金属を用いない。柱に溝を彫って、はめ込むことにより、従来工法の2倍の剛性、耐久力を実現したものである。

 日野山徳恩寺では、T-WOOD真壁が用いられ、着工は2018年4月を予定する。九品仏淨眞寺ではT-WOOD組み板壁が利用され、2018年7月の、こちらは竣工を予定している。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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