選挙CMでエミネム風BGMのニュージーランド国民党、著作権侵害との判決

2017年10月28日 19:46

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記事提供元:スラド

ニュージーランドの高等裁判所は25日、ニュージーランド国民党が2014年の選挙キャンペーンCMで「エミネム風」のBGMを使い、エミネムの著作権を侵害したとの判断を示した(判決文: PDFNZ Heraldの記事TorrentFreakの記事Newshubの記事)。

BGMに使われたのは「Eminem Esque」というプロダクションミュージック作品で、エミネムの「Lose Yourself」のバックグラウンドトラックに似ている。2014年に国民党からCMの製作を依頼された広告代理店は、当初Lose Yourselfの一部を使用したパイロット版のCMを作成。ステディーでシンコペーションしたビートとリズムが力を合わせてボートを漕ぐ映像にマッチしていたという。広告代理店はそのほかの選択肢を検討するため、ニュージーランドの音楽プロダクションに調査を依頼したところ、クラシック曲1曲とEminem Esqueが提示されたそうだ。

この2曲を使用したパイロット版を作成してフォーカスグループに見せた結果、現代的なEminem Esqueの方がクラシック曲よりも好ましいという結果が出る。完成したCMを見た選挙スタッフなどからエミネムに似ているとの指摘が出るが、ニュージーランドやオーストラリアの仲介業者および著作権管理会社から著作権上の問題はないとの回答を得て使用契約を結んだ。しかし、8月にCMがYouTubeで公開され、テレビ放送が開始されるとLose Yourselfに似ているとメディアで指摘されることになる。その結果、楽曲の著作権の50%と残りの50%の独占使用権を持つエミネムの音楽出版会社Eight Mile Styleが国民党に申し入れを行い、国民党側はEminem Esqueの使用を中止することになる。
裁判で被告側はLose Yourselfがオリジナル作品であることを認めたうえで、作品のすべての要素がオリジナルとはいえず、作品の模倣・複製にはあたらないと主張。被告側証人はメロディーの相違なども指摘していた。一方、原告はLose Yourselfのボーカル(ラップ)なしバージョンやEminem Esqueとつなげたバージョン、重ね合わせたバージョンなどを提出し、類似性を主張した。

判決ではEminem Esqueは客観的にみてLose Yourselfとそっくりであり、認識可能な違いはわずかである点や、Eminem Esqueの作曲者が意図的に模倣したことが証拠から推定できる点、Lose Yourselfではメロディーが支配的要素ではない点などを挙げている。その結果、国民党による著作権侵害を認め、賠償金60万ニュージーランドドルおよび利子を原告へ支払うよう国民党に命じている。広告代理店や仲介業者などの責任については今後審問が行われるとのこと。

プロダクションミュージックライブラリーでは、自社で著作権を持つオリジナルの音楽作品をライセンス提供する。しかし今回の判決は、既存の作品に似たような作品を使用した場合、正規ライセンスを受けていても著作権侵害に問われる可能性を示すものとなる。なお、原告側が証拠として提出した各バージョンは判決文内にリンクが張られている。興味のある方は聴いてみるといいだろう。

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