【日産・可変圧縮エンジン登場?】現代の車はジョイスティック1本で運転可能

2017年10月25日 06:28

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昨年日産が発表した世界初となる量産型可変圧縮比エンジン「VCターボ」。(写真: 日産自動車の発表資料より)

昨年日産が発表した世界初となる量産型可変圧縮比エンジン「VCターボ」。(写真: 日産自動車の発表資料より)[写真拡大]

 日産自動車が日本の企業ではEV推進の最先端の企業と見られてれているが、「可変圧縮エンジン」を開発し「エンジンの熱効率を上げる最先端」に躍り出てきた。これはどうしたことか?EV移行の流れの中で、日産自動車としての立ち位置はどのようになっているのだろうか。

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■自動車のドライブ・バイ・ワイヤー化、すなわち電子制御化

 半世紀前の自動車は、殆ど電子制御は使われていなかった。ディストリビューターも機械式で、手入れが大変だった。燃料供給もキャブレターだった。電子接点でプラグに点火する電流を流すようになって、キャブレターに替わって燃料噴射になったときには、冬の朝、エンジンがかからない悩みは解消されていった。

 「本格的電子制御が始まったのかな」と思わせたのは、2代目ソアラに採用されたショックアブソーバーだった。前輪で障害物を感知すると、後輪のショックを和らげる仕組みだった。当時は「技術の日産」「商売のトヨタ」と言われており、「トヨタは使いやすさなどは良いのだが技術はいまいち」との評判だった。日産は「ポルシェシ・ンクロ」「4輪独立懸架」を採用するなど最先端の技術を取り入れていた。

 「電子制御で行く」とトヨタの営業マンが力を込めて言っていたのが印象的だった。それから、次々に電子制御は取り入れられてきて、現在ではハンドル、アクセル、ブレーキ、ミッションなどすべてが電子制御になり運転装置はドライブ・バイ・ワイヤーとなってしまった。

 それは殆ど「リモコン装置」でテレビゲームをしている状態と同じとなり、ハンドルやブレーキ、アクセルなどからフィードバックされる運転感覚は、全てがプログラムで作り出されているようなものだ。スポーツカーのエンジンサウンドまでスピーカーから流れる状態だ。人間が五感で感じて操縦しなくとも、車が勝手に安全を確保しながらその機械的限界内で運転してくれるのだ。

 すべては作り出されたもので、日産リーフで宣伝されている1ペダル操作が話題だが、本当はジョイスティック1本で操作したほうが、操縦性能は良いはずだ。ブレーキもアクセルもハンドルも、全て統一してしまうことがベストであろう。それが出来ないのは「単に人間になじみがない」からに過ぎない。

■可変圧縮エンジンはEV化に反する動きなのか?

 さらにエンジンを内燃機関からモーターに置き換える動きが盛んになった。日本の中でその先頭に立っている日産が、いまさらエンジンの革命的新技術を採用してくるのはなぜなのか?新エンジンの目的はもちろん「熱効率の向上」だ。マツダが盛んにエンジンの熱効率向上を目指して頑張っているが、日産の可変圧縮エンジンが50%の熱効率を可能にするかもしれないと言うのだ。

 アトキンソンサイクル、ミラーサイクルエンジンも圧縮比を変化させているように思うかもしれないが、爆発工程を長く取っているだけで、圧縮比を変えているのではない。日産の新エンジンは、エンジンの状況に応じて圧縮比そのものを変化させている。

 ガソリンなどの内燃機関は、圧縮比が高いほど熱効率が良くなる。しかし、圧縮比が高いと空気の熱が上がり過ぎて、点火する前に自然に爆発してしまう。これをノッキングと呼んで、坂道を強引に上るときなど、エンジンの負荷がかかっているほど起こしやすくなっている。

 そこで日産の新エンジンは高負荷がエンジンに掛かったときなどだけ圧縮比を下げ、ノッキングを起こさないようにして、そのほかの時は、出来るだけ高圧縮にして熱効率を高める仕組みなのだ。

 このエンジンが採用になると言うことは、全てがすぐにEV化するのではなく、エンジンもこれからしばらくは使われていくと日産も考えているのであろう。バッテリーの効率化の進歩と、エンジンの効率化のテンポ、そして自然エネルギーによる発電の進歩状況によって、これからの自動車のエネルギー源が決まると考えてよかろう。

■自動車革命はEV・AIで起きるのではなく、IoTで生産方式が変化するときに起きる

 電動化は車の性能、特性などにとって大きな変化だ。AIによる自動運転の実用化は、自動車社会そのものの大変革に相違ない。しかし、IoTによる変化は自動車業界にとっては「産業革命」だ。受注、生産、整備と業界の再編成となるであろう。なぜなら、生産方式の変化を求められるからだ。整備方式も変化せざるを得まい。

 この変化とEV・AIの採用とは直接の関係はない。エンジンがモーターになり、電子制御がさらに進んで、AI自動運転となっても造り方は変わりない。「順序生産」を可能にすることを目指すことで、「受注生産」の時の高い資金効率を得ることが出来る。「商売」である限り、この方向を目指していくことになる。つまり「ビジネスモデル」の資金効率を上げる方向だ。

 EV・AIで自動車の性能には大変革が起きるが、生産方式の方向性は変化しない。「第4次産業革命」をもたらすのはIoTである。その時求められるのはロット生産ではない。するとグローバル発注に制限が見込まれる。出来ることなら鉄の生産すら、ラインに1台分ずつの生産にしたいくらいなのだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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