日本銀行ETF保有が21兆円に 1年で倍増 保有増加へ懸念も

2017年10月22日 18:26

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 日本銀行が保有しているETF(上場投資信託)の残高が最近の購入実績を株価動向から時価計算で18日時点で21兆円程度となった。昨年7月より購入額を年3.3兆円から年6兆円に増額した影響もあり、昨年10月末の保有残高10兆円からほぼ倍増している。今月20日時点で14営業日連続での上昇など、最近の日経平均株価上昇の要因ともなっているが、リスクは膨らみ、批判の声も出始めている。

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 そもそも中央銀行の株の買い入れは、その波及効果が見えづらく、また恩恵も富裕層や上場企業に偏りやすいと言われており、欧米では実施されていない。しかし日銀は物価上昇率の目標2%を達成するための手段の一つとして2010年12月にETFの買い入れを始めた。自民党が政権奪回した当初日経平均株価8,600円であったものが現在2万円を超える後押しとなったことを考えれば、買い入れ政策に一定の効果はあったと言える。

 しかしその後、当初4,500億円を限度としていた買い入れ額は段階的に引き上げられ、昨年7月には年6兆円と大幅に増額となった。それに伴って昨年10月末時点で10兆円程度であった保有残高もほぼ倍増し、今や日本株全体の3%を超える規模となった。このまま買い入れが続けば、株式銘柄の流動性の低下や日銀が大株主となることでの企業統治(コーポレートガバナンス)にも影響が出る恐れがあり、「株価形成をゆがめている」との批判も出始めている。

 それだけではない。物価上昇率2%達成のための買い入れであるが、インフレがさらに過熱し、物価上昇が続いた場合はETF売却することで景気への冷却効果があると日銀は目論んでいる。しかし、大量売却を行えば一気に株価を引き下げかねず元の木阿弥となる可能性もあり、売却のタイミングには大きなリスクがある。また将来目標未達のまま株価が大きく下がった場合はさらに問題がある。保有残高は8兆円弱の自己資本の3倍近くもあり、株価が下がった場合は、含み損を抱えることで自己資本へのダメージがあり、日本銀行の財務も健全性を損なう恐れがある。

 物価上昇2%達成は日銀の悲願であるものの、それに伴うリスクは間違いなく存在し、このまま買い入れ続ければそのリスクは増大していく。効果とリスクのバランスを取りながら、市場に影響を及ぼすことなく売却していくためにどう日銀がかじ取りをするかが、焦点となりそうだ。

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