ロボットスーツHALで再び歩く意欲を AIGが脊髄受傷の子供達を無償支援

2017年10月22日 17:59

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左から、ロボットスーツHAL、ノディン AIG ジャパン社長、黒岩神奈川県知事、山海社長(写真:サイバーダイン発表資料より)

左から、ロボットスーツHAL、ノディン AIG ジャパン社長、黒岩神奈川県知事、山海社長(写真:サイバーダイン発表資料より)[写真拡大]

 サイバーダインとAIGジャパンは、双方の業務提携に基づいて、脊髄に障害を持つ神奈川県内の小中高生50名を対象に、ロボットスーツHALを活用した歩行機能向上促進の機会を無償で提供すると発表した。費用はAIGジャパンが、社会貢献の一環として拠出し、2018年3月末まで募集する。

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 本プログラムは、事故の後遺症などで自立歩行が困難な子供達に歩行機能向上への意欲増進のための新たな機会を提供する試みだ。

 サイバーダインのロボットスーツHALは、装着者の脳から筋肉へ送られる信号を「生体電位信号」として読み取ることで、装着者の意思に従った歩行動作を実現する世界初の試みである。これを繰り返すことによって、身体機能の改善・再生が見込まれるという。

●ロボットスーツHALの動作原理


 HALは、2004年に設立された筑波大学発のベンチャー企業サイバーダイン社が開発した世界初のロボットスーツである。HALの動作原理は、人間が手足を動かす原理を電気信号で代替するイメージである。

 先ず、装着者が「歩きたい」と考えることが最初である。脳は神経を通して必要な信号を、その動作に必要な筋肉へ送りだす。

 脳から神経を通じて筋肉へ送られる信号は、非常に微弱な「生体電位信号」として、皮膚表面から漏れ出す。HALは独自に開発したセンサーを皮膚に貼り付けるだけで、「生体電位信号」を読み取るという。

 動作は「生体電位信号」の検出状態により、意図通りの随意制御と自律制御を混在させて装着者の歩行をアシストする。それは、装着者の意思に沿った動きであり、不足する力を補うことであるという。

 最後は、脳・神経系への運動学習により、身体機能を改善・再生することである。脳は実際に体が、どういう信号でどのように動作したか、確認している。歩くという動作をHALが適切にアシストしたとき、「歩けた」という感覚のフィードバックが脳へ送られるという。この一連のフィードバックがリハビリへとつながる。HALなしで歩くための最初の一歩だ。

●装着型ロボット(サイバーダイン、HAL)のテクノロジー

 主力製品のロボットスーツHALは、医療・福祉の分野のみならず、介護や重作業分野等にも幅広く展開され、結果をフィードバックしていることが強みであろう。装着者自身での自立歩行を最終目標とし、装着者の脳の学習を視野に入れたていることでも、現場重視であろう。

 皮膚から漏れ出る「生体電位信号」は、乾電池の1/1,000~1/10,000と微弱な信号だという。微弱信号と僅かな動作もキャッチするセンシング技術、これに、随意制御と自律制御を組み込むことで装着者の歩行をアシストする。

 装着型ロボットは世界初の技術であり、世界中で普及するために規格制定にも主導的な立場をとる。20日には、装着型ロボット製品規格JIS B 8456-1制定とISO化を提案・主導したと発表している。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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