欧州委員会、海賊版は正規版の売り上げにほぼ影響なしとの報告2年以上公表せず

2017年9月25日 08:23

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記事提供元:スラド

欧州委員会では2014年、海賊版コンテンツの消費による正規版の売り上げへの影響について、調査をEcorys Netherlandに委託した。報告書は2015年に完成したが、現在まで正式発表されずにいるという(Julia Reda氏のブログ記事TorrentFreakの記事Softpediaの記事EDRiの記事)。

今回公表された300ページを超える報告書(PDF)は、欧州議会議員でドイツ海賊党のJulia Reda氏が情報公開請求により入手したものだ。調査はドイツ、英国、スペイン、フランス、ポーランド、スウェーデンの6か国から各5,000人、計30,000人のインターネットユーザーを対象に実施された。調査の目的は海賊版による正規版売り上げへの影響のほか、海賊版利用者がいくらまでなら代金を支払って正規版を利用するのかを解明することだ。

報告書では映画を除き、海賊版による正規版の売り上げへの影響はほとんどないと結論付けられている。映画の場合、新作の人気映画では海賊版利用数の40%程度が正規版の売り上げ減につながる。一方、同じ作品を2度観る人はほとんどいないが、実際に観る場合には正規版の売り上げ減は20%程度になるという。そのため、旧作に対する海賊版の影響は40%未満、海賊版の新作人気映画に対する影響は、現在の売り上げの5%程度と推計されている。
また、映画とテレビ番組の正規版の価格は海賊版利用者の80%が支払うと回答する金額よりも高く、その他のコンテンツでは正規版の価格と海賊版利用者の支払い意思とのギャップは見られなかったとのことだ。

欧州委員会が36万ユーロもかけて作成した調査結果をなぜ公表していなかったのかは不明だが、海賊版対策に都合の悪い情報を隠しているとの批判もみられる。

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