トヨタとマツダの資本提携に秘められた”深謀遠慮”(後編)

2017年9月12日 17:06

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提携発表の記者会見で握手するトヨタの豊田社長(左)とマツダの小飼社長。(写真: トヨタ自動車の発表資料より)

提携発表の記者会見で握手するトヨタの豊田社長(左)とマツダの小飼社長。(写真: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]

 マツダの社名で想起させられるのが「ロータリーエンジン」という人は少なくないはずだ。ひと頃は夢のエンジンとして大手の自動車メーカーで開発競争が行われたが、マツダは製品として量産化に成功した世界で唯一のメーカーである。今回の「スカイアクティブ―X」の性能に関わる情報は、マツダの技術者に引き継がれてきた独創的な開発者魂が健在であることを如実に示すものである。

【前編は】トヨタとマツダの資本提携に秘められた”深謀遠慮”(前編)

 8月初旬に発表されたトヨタとマツダの資本提携と、その4日後にマツダが発表した「スカイアクティブーX」と名付けた次世代エンジンは大きな関わり合いを持つと見られる。ここでクローズアップされるのが提携目的の「(5)商品(モデル)の相互補完」ではないか。提携目的として要約された、あまりイメージの沸かない言葉ではあるが、よく考えると“商品の相互補完”と言う言葉の持つ意味は非常に深くて重い。

 両社が資本提携を推進する計画は、EVが話題になった最近になって検討を開始した訳はない。おそらく数年か、もっと長い準備期間を経て熟成されてきた成果が結実したのだ。そしてトヨタの動機を刺激した大きな要素がマツダの持つ“独創的な技術力”だ。トヨタは巨大企業でありながら身のこなしが軽い。スバルとの“86”(ハチロク・スバル名BRZ)の共同開発を見てもその柔軟さは明白だ。何しろスポーツカーの命とも言えるエンジンにスバルの誇る水平対向ボクサーエンジンが採用されているのだ。その“86”(スバル名BRZ)はトヨタとスバルというそれぞれの親元で、メーカーのカラーを色濃く反映した進化を続けている。

 長期的に考えれば今後はEVが主流になるにしても、いくつかの大きなうねりの中で徐々に条件が絞り込まれていくことになる。想定されることや期待されていることは数限りないが、現在確定的なことはほとんどない。浮足立って地に足の付かない行動を繰り広げる必要はない。内燃機関の性能を極限まで向上させるとしても侮れない時間の長さは確保されている。トヨタを中心とする穏やかな連携が、今後の自動車の行く先にどんなスケッチを描いているのか、垣間見ることができる時期はそんなに遠くない筈だ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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