古代の子供たちは大人と同じものを食べていた?

2017年8月25日 07:06

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食べ物を集める古代人の女性のイメージ。(画像:いらすとや)

食べ物を集める古代人の女性のイメージ。(画像:いらすとや)[写真拡大]

 京都大学の研究で、過去1万年程度の古代人の食生活を分析したところ、狩猟採集文化圏においては大人と子供の食事にほとんど違いが見られないものの、農耕民・都市民の社会になると子供の植物摂取割合がわずかながら高くなる、ということが明らかになった。

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 子供と大人の食嗜好には相違がある。それは経験的にはよく知られている事実である。ヒトに限った話ではないが、哺乳類である以上は、離乳期には柔らかい食物が与えられる。しかしそれ以上の、様々な古代のヒト集団における、大人と子供の食性の違いを横断的に分析した研究は、これまでなかった。

 一説には、未消化の消化管で消化しやすいものであるとか、脳の成長に必要な栄養に富んだ柔らかい食物が子供に与えられる傾向があるのではないかとも言われるのだが、その実証的な根拠は見つかっていなかった。

 今回の研究はメタ分析によって行われた。過去1万年程度の、世界中の古代人の骨に関する報告済みのデータを分析し、離乳後から8歳までの子供と、成人の男女の食性を比較。特に、食性全体に占める植物の摂取割合に着目した。分析の対象となった古代人集団は、最大で36であった。

 すると、結局のところ、狩猟採集型の生活、つまり現生人類が20万年前(最新の学説では30年前とする説もあるが)に誕生して以来、その期間のほとんどを過ごしてきた社会形態において、大人と子供の食生活に、取り立てて違いは見られないということが分かったのである。

 だが、もう一つの事実も今回の研究から明らかになった。狩猟採集型から農耕への移行が生じた後、期間的には約1万年前からそれ以降になるが、子供の食物に占める植物の割合が上がっているという。

 これが何を意味するのか、現時点では詳らかでない。食糧分配に余裕ができたことの結果であるのか。それとも、栄養学的な妥当性が反映されたものであるのか。いずれにせよ、今後の研究が待たれるところである。

 なお、研究の詳細は、国際学術誌American Journal of Physical Anthropologyに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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