コメ生産コストを3割カットする新農法、その秘密は「田植え廃止」

2017年7月13日 11:49

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クボタと住友化学の製品・技術・サービス連携例。(画像:クボタ、住友化学共同発表資料より)

クボタと住友化学の製品・技術・サービス連携例。(画像:クボタ、住友化学共同発表資料より)[写真拡大]

 国内最大手農機メーカーのクボタと、農薬シェア第1位の住友化学は、田植えの過程を廃することでコメの生産コストを最大で3割減らす新農法「鉄コーティング直播栽培」を目下研究中であり、2020年までの実用化を目指している。

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 コメの栽培、という、かなり技術的には煮詰まっていそうな分野で、コストを3割もカットするとはどういうことか。AIを導入するとか、ビッグデータであるとか、そういったような話であるのかと思えば、これが違う。なんと、直播への回帰であるというから驚きだ。

 コメの直播とは、別の場所で苗を育てて田植をするという方法とは異なり、直接に種もみを撒いて栽培する農法のことである。乾田直播、つまり乾いた畑に種もみを撒く方式は「陸稲栽培」とも呼ばれ、これは非常に古い。

 その起源は有史以前にさかのぼるので詳細は分からないが、少なくとも縄文時代には直播によるコメ陸稲栽培が日本列島にあった、ということは分かっている。こちらの方が水稲よりもコメの栽培法としては古い起源を持つのではないかと見る向きが強い。

 だが、少なくとも現在、日本ではほぼ衰退し切っている。少々古いが1994年の統計によると、直播によるコメ栽培は全体の0.4%だそうである。タイ、ネパールなど、今でも広く行われている国がないわけではないし、「鉄コーティング直播栽培」は陸稲ではなく水田に直播を行う「湛水直播」の方式ではあるが、いずれにせよ直播そのものがそれ自体ではまったく新しい技術ではないのは確かだ。

 なぜ直播は、もともとローコストであるにも関わらず衰退したか。要因はさまざまある。だが、田植えをする方式の方が日本人好みのコメを作りやすい、というのが大きな理由であるとは言われている。

 ならば、直播栽培を現代に「新農法」として蘇らせるためには、その要素を課題としてクリアしなければならない。そこで、種もみを鉄粉で覆う独自の新たな技術、専用の農機、また専用の農薬などを開発して、新たな直播農法の確立を目指しているわけである。

 果たして、日本で直播農法が復権する日が来るのだろうか?微妙な問題を含むところだろうとは思われるが、期待はさせてもらうとしよう。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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