アドバネクス Research Memo(2):国内外でトップシェアの製品を排出

2017年7月4日 15:02

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記事提供元:フィスコ


*15:02JST アドバネクス Research Memo(2):国内外でトップシェアの製品を排出
■アドバネクス<5998>の沿革と会社概要

1. 沿革
1930年に初代社長が東京都にスプリング専門工場を設立して創業した。1946年に株式会社に改組し、社名を株式会社加藤スプリング製作所に、2001年に現在の株式会社アドバネクスに変更した。以前にモータ部品の製造会社と自動車用プラスチック部品の製造・販売をする会社を買収したが、十分なシナジー効果や収益性が得られず、選択と集中の一環として、2011年3月期にモータ事業、2013年3月期にヒンジ事業、2015年3月期にプラスチック事業をそれぞれ事業売却もしくは撤退したことにより、精密ばね事業専業となっている。2015年3月期の連結売上高は29,487百万円、事業別構成比は精密ばね事業が59.8%、プラスチック事業が40.2%であった。同期末にプラスチック事業を行う子会社を譲渡したため、 2016年3月期の売上高は前期比35.3%減、 営業利益が同38.2%減となった。 精密ばね事業だけを比較すると、前期比3.4%の増収、4.2%の営業減益であった。

同社は、1980年代以降、世界的なヒットを飛ばし、トップシェア製品を輩出した。音楽テープ用テープパッド(国内シェア70%)、ビデオテープ用リーフスプリング(世界シェア50%)、3.5インチフロッピーディスク用シャッター(世界シェア80%)、携帯電話用ヒンジ(世界シェア50%)、光ディスク用センターハブ(国内シェア90%)などである。現在は、医療用の留置針用ばねで国内シェア60%を獲得している。

海外への進出も早く、1971年に米国に子会社を設立したのを皮切りに、シンガポール、英国、香港、タイ、中国、ベトナム、メキシコ、ドイツ、インドネシアに海外子会社を開設している。1988年に設立された英国の子会社は、英国国内の有力ばねメーカーを買収し、2工場体制を取っている。Advanex Europe Ltd.は、ノッティンガムポスト主催の2016年ノッティンガム州ビジネス大賞において製造部門優秀賞を受賞した。同子会社は、2012年にもベストカンパニー賞を受賞しており、2度目の受賞となる。現在の主力製品は、医療機器用の精密ばね製品及び航空機器や自動車市場向けの締結補強部品である。英国子会社の製品開発には、日本から技術支援を行った。これらが、グループ会社の中で最も高い収益を上げている。

これらの経緯から、同社はグローバルニッチトップという経営戦略を採っている。

1964年に東証2部へ新規上場を果たし、2004年に東証1部へ指定替えとなった。

2. 事業内容
精密ばね専業メーカーである同社は単一事業セグメントであるが、用途別と所在地別の連結売上高の内訳を公表している。2017年3月期の市場別売上高構成比は、自動車が40.8%、OA機器が20.3%、医療機器が7.2%、精密機器が6.4%、住設機器が4.7%、PC・周辺機器が3.1%、AV・家電が3.0%、航空機器が2.9%、携帯情報端末が1.4%、その他が10.2%であった。2015年3月期以降、自動車市場が最大の顧客先となっている。

取引先は約2,000社あり、製品種類は約15,000種類に及ぶ。世界で1、2位を争うドイツ系及び日系自動車部品メーカーと取引をしている。

所在地別の売上高構成比は、日本が42.2%、米州が11.1%、欧州が9.7%、アジアが37.0%である。研究開発及び営業は国内で行うものの、生産は海外というケースがあり、日本は赤字が続く。米州は、新工場の立上げが重なり、前期は収益的に厳しかった。欧州は、高収益の医療機器向けで収益を稼ぐ。アジアは、タイなどで自動車向けが好調のうえ、中国でも収益改善の取組みが奏功している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)《TN》

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