寄生植物の成分がアルツハイマーの原因物質を抑制する

2017年5月26日 18:24

印刷

寄生植物ヤセウツボ。

寄生植物ヤセウツボ。[写真拡大]

 筑波大学の研究グループは、寄生植物ヤセウツボから取り出した物質が、アルツハイマー病の原因物質であるとされるタンパク質「アミロイドベータ」の凝集を抑える作用を持つことを発見した。日経産業新聞が報じた。

【こちらも】ビールの苦み成分にアルツハイマー病予防の効果 東大などが発表

 現在の研究では、アルツハイマー病は、凝集したアミロイドベータが脳内に蓄積することで起こる、と考えられている。凝集したアミロイドベータは毒性を持つ上に、活性酸素を生じさせて周囲の細胞にも死をもたらす。

 つまりこのアミロイドベータの凝集を抑制したり、活性酸素の発生を抑えたりすることができれば、アルツハイマー病の予防や治療につながる可能性があるわけである。今回発見された物質は、活性酸素の発生を打ち消す効果も見られたという。

 さて、ヤセウツボについて語ろう。学名Orobanche minor、ハマウツボ科ハマウツボ属、和名痩靫(ヤセウツボ)。地中海沿岸に原産し、日本をはじめその他の世界各地に外来種として定着している。

 マメ科やキク科の植物に寄生する性質を持つ。従って牧草や農作物に寄生することもあり、外来生物法では要注意外来生物に指定されている。雑草であり、これまで特に人類の文明に寄与してきた何の実績があるというわけでもない。

 しかし、アミロイドベータに作用する天然物質を探し求める過程で、筑波大学の研究グループはこのヤセウツボに注目した(なお、筑波大学の構内にも普通に雑草として生えているそうである)。

 ヤセウツボをエタノールに入れ、成分を取り出し、精製して分析したところ、上記のような性質を持つことが明らかになったという。

 ちなみにさらなる研究によって、カテコールと呼ばれる特別な構造を2つ持っていることが、このような効果を生じさせる理由であるらしい。

 今後の研究では、これと似た、同じ作用を持つ物質を探し、ゆくゆくは認知症を予防する食品を開発したい考えであるという。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

関連記事