翻訳センターは17年3月期第3四半期累計大幅増益、通期予想は3回目の増額余地

2017年2月10日 07:07

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 翻訳センター<2483>(JQ)は専門性の高い翻訳サービスが主力の日本最大規模の言語サービス会社である。通訳や国際会議運営なども展開している。2月9日発表した17年3月期第3四半期累計連結業績は大幅増益だった。通期も翻訳事業が好調に推移し、コンベンション事業における大型国際会議運営も寄与して大幅増益予想である。そして3回目の増額余地がありそうだ。株価は徐々に下値を切り上げている。好業績を評価して戻りを試す展開が期待される。

■企業向け翻訳サービスを主力として通訳や国際会議運営なども展開

 特許・医薬・工業・法務・金融分野など専門性の高い企業向け翻訳サービスを主力として、派遣、通訳、語学教育、コンベンションなどに業容を拡大している。12年9月通訳・翻訳・国際会議運営のアイ・エス・エス(ISS)を子会社化、13年6月アイタスからIT関連ローカライゼーション/マニュアル翻訳事業の一部を譲り受け、14年10月医薬品承認申請・取得に関するメディカルライティング業務を専門に受託する子会社パナシアを設立した。

 16年3月期の事業別売上構成比は翻訳事業73.2%(特許分野19.6%、医薬分野25.8%、工業・ローカライゼーション分野20.8%、金融・法務分野6.8%)、派遣事業9.5%、通訳事業6.8%、語学教育事業2.3%、コンベンション事業5.9%、その他1.8%だった。

 翻訳事業は専門性の高い産業翻訳に特化している。グループ全体で約6300名の登録者を確保し、対応可能言語は約75言語と国内最大規模である。取引社数は約4400社、年間受注件数は約6万4000件に達している。企業のグローバル展開を背景として、翻訳サービスの需要は企業の知的財産権関連、新薬開発関連、新製品開発関連、海外展開関連、IR・ディスクロージャー関連を中心に拡大基調である。

 なお15年11月翻訳サービスの国際規格「ISO17100:2015」認証を取得、16年4月情報セキュリティ・マネジメントシステム(ISMS)の国際規格「ISO/IEC27001:2013」認証を取得した。16年7月には、米国の調査会社Commom Senese Advisory社発表の「世界の語学サービス会社ランキング2016」において、5年連続でアジア1位にランクインしたと発表している。

■総合的言語ソリューションを目指してアライアンスも活用

 総合的言語ソリューション提供を目指してアライアンスも活用している。14年8月多言語対応コンタクトセンターサービスのディー・キュービックと、日本国内におけるマルチランゲージ・コンタクトセンターサービス(在日外国人を顧客とする企業や団体を対象とした通訳・翻訳サービス)に関して業務提携、15年4月ディー・キュービックの親会社キューアンドエーと合弁でランゲージワンを設立した。ディー・キュービックの多言語対応コンタクトセンターサービスをランゲージワンに移管し、センター運営およびサービスの強化を図る。

 15年10月、自動機械・電子機器の設計・製作事業およびドキュメントサービス事業のユースエンジニアリングと、ドキュメントサービスにおける戦略的パートナーとして業務提携した。

 16年6月ランゲージワンが日本ATMと金融市場に向けた多言語対応サービスの提供で業務提携し、ランゲージワンが第三者割当増資で発行する株式を日本ATMが引き受けた。インバウンド需要の高まりに伴って国内における多言語対応サービス・サポートの必要性が増しているため、ATM監視・運用アウトソーシング圧倒的シェアを持つ日本ATMグループと協業して金融機関の外国人対応を支援する。

 16年9月にはナレッジオンデマンド(東京都)と、同社が開発したチーム・ドキュメント・システム「WikiWorks」の販売契約を締結した。

■下期の構成比が高い収益構造

 四半期別業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期21億08百万円、第2四半期22億53百万円、第3四半期23億07百万円、第4四半期25億23百万円、営業利益が16百万円、1億38百万円、1億31百万円、2億19百万円、16年3月期は売上高が21億10百万円、21億52百万円、24億61百万円、24億55百万円、営業利益が52百万円、82百万円、2億12百万円、1億88百万円だった。下期の構成比が高くなる傾向が強い収益構造である。

 16年3月期は派遣事業の売上減少の影響で全体は15年3月期比微減収だったが、主力の翻訳事業が好調に推移し、販管費抑制も寄与して増益だった。売上総利益は同5.6%減少し、売上総利益率は42.1%で同2.5ポイント低下した。販管費は同7.2%減少し、販管費比率は36.3%で同2.8ポイント低下した。特別利益では投資有価証券売却益を計上した。ROEは14.4%で同4.0ポイント上昇、自己資本比率は67.1%で同4.6ポイント上昇した。配当は2期連続増配で配当性向は20.7%だった。

■17年3月期第3四半期累計は大幅増収増益

 2月9日発表した今期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)連結業績は、売上高が前年同期比15.3%増の77億52百万円、営業利益が同64.6%増の5億70百万円、経常利益が同70.0%増の5億83百万円、そして純利益が同18.6%増の3億62百万円だった。

 主力の翻訳事業が好調に推移した。コンベンション事業の大型国際会議運営も寄与して大幅増収増益だった。売上総利益は同10.8%増加したが、売上総利益率は40.5%で同1.7ポイント低下した。販管費は同3.3%増加にとどまり、販管費比率は33.1%で同3.9ポイント低下した。

 事業別売上高を見ると、翻訳事業は同4.4%増の51億38百万円(特許分野が同1.0%減の13億46百万円、医薬分野が同4.5%増の18億07百万円、工業・ローカライゼーション分野が同4.1%増の14億13百万円、金融・法務分野が同21.6%増の5億69百万円)だった。金融・法務分野は銀行からのスポット案件も寄与した。

 派遣事業は金融・IT関連が堅調で同0.9%増の6億63百万円、通訳事業は外資通信機器メーカーの大型案件も寄与して同19.7%増の5億88百万円、語学教育事業は同横ばいの1億62百万円だった。コンベンション事業は「第99回ライオンズクラブ国際大会」「第40回国際外科学会世界総会」などの大型案件が寄与して同2.8倍の10億73百万円だった。その他は外国への特許出願支援サービスが好調で同10.2%増の1億27百万円だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期25億93百万円、第2四半期23億77百万円、第3四半期27億82百万円、営業利益は1億73百万円、1億68百万円、2億29百万円だった。

■17年3月期通期は大幅営業増益予想で3回目の増額余地

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想は前回予想(10月27日に2回目の増額修正)を据え置いて、売上高が前期(16年3月期)比8.4%増の99億50百万円、営業利益が同34.6%増の7億20百万円、経常利益が同34.7%増の7億20百万円、純利益が同8.0%増の4億65百万円としている。配当予想は同2円増配の年間55円(期末一括)としている。3期連続増配である。予想配当性向は19.9%となる。

 コアビジネスである翻訳事業が好調に推移し、コンベンション事業における複数の大型国際会議を含む会議案件も寄与する。通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高77.9%、営業利益79.2%、経常利益81.0%、純利益77.8%である。期後半の構成比が高くなりやすい収益構造を考慮すれば、通期予想には3回目の増額余地がありそうだ。

■中期経営計画で18年3月期ROE10%以上目標

 15年5月策定の第3次中期経営計画では、目標数値として18年3月期売上高110億円、営業利益7億50百万円、純利益4億50百万円、ROE10%以上を掲げている。また営業利益率については中期的に8%を目指すとしている。

 重点施策としては、顧客満足度向上のための分野特化戦略のさらなる推進、ビジネスプロセスの最適化による生産性向上、ランゲージサービスにおけるグループシナジーの最大化を推進する。需要は拡大基調であり、中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は徐々に下値切り上げ、好業績を評価して戻り試す

 株価の動きを見ると、16年11月の昨年来高値3990円から反落したが、調整が一巡して徐々に下値を切り上げている。

 2月9日の終値3750円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS276円04銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間55円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1855円74銭で算出)は2.0倍近辺である。時価総額は約63億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって下値を切り上げている。好業績を評価して戻りを試す展開が期待される。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

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