風力発電システム市場 陸上は17年以降は拡大、洋上は2020年代後半に

2017年1月6日 00:42

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記事提供元:エコノミックニュース

 富士経済は、再生可能エネルギーのうち、太陽光の次に注目される風力の発電システム市場について調査した。その結果を報告書「World Wide 陸上/洋上風力発電市場の現状と将来展望 2017」にまとめた。

 それによると、陸上システムの世界市場は、2015年の中国需要急増の反動から2016年は縮小が見込まれるが、2017年以降は拡大推移すると予想されるとしている。

 エリア別では、中国は、2015年に過去最高導入量を更新し、世界市場の5割を占めた。2016年はFIT価格低下および系統の弱い好風況エリアの新設を規制したためマイナス成長が見込まれるが、低風況エリアに市場が形成されると考えられるほか、今後も年間20GWから25GWが新設されるとみられる。

 米国は、風力発電の発電量に応じて税金を還付するPTC(Production Tax Credit)制度が2015年末に失効したことから2016年はマイナス成長が見込まれるが、2019年まで延長が決まりプラスに転じるとみられる。今後は低風況エリアでも採算がとれる大型風車による大規模システム開発を中心に、リパワリング市場も活発になると予想される。

 欧州は、風力発電システム市場の黎明期より拡大を牽引してきたが、各国はFITから入札制度に変更しつつあり、イタリア、ルーマニアなど、財政事情の厳しい国から大規模な政策転換が始まっている。ドイツ、フランス、ポーランドなどで需要が期待できるが、2017年以降ドイツはFITから競争入札への移行が検討されており、市場は厳しい局面に突入するとみられる。2020年以降は縮小が予想される。

 その他国・地域は、人口増加とそれに伴う新設電源に対する需要が大きく、特に国内資源が少ない国・地域ではエネルギー自給率向上を目的に導入が進む。現在需要が拡大しているのはブラジル、インド、カナダ、トルコ、メキシコなどで、特にブラジルの伸びが大きい。2030年になると中南米、インド、アフリカ、中東などが中国と肩を並べる需要規模になると予想される。

 洋上システムの世界市場はけん引していたイギリスに加え、ドイツで稼働案件が集中したことから2015年に3GW超となった。2016年は、2014年の洋上FIT開始により中国市場が本格化してきたことに加え、米国でも初の開発案件の稼働が見込まれる。洋上風力発電は1サイトの開発に10年掛るとも言われており、本格的市場形成は2020年代後半になると予想される。欧州、中国以外のエリアは、洋上風力発電の導入を後押しする政策を整備中であり、日本、台湾、韓国、米国、インド、ブラジルなどで市場形成が期待される。

 風力発電システムの国内市場は、陸上システムの国内市場は、2011年の補助金打ち切り、2012年の環境アセスメントの開始により低迷していたが、2012年に始まったFITを追い風に2014年頃より拡大し始めた。2015年に太陽光発電大量導入により系統容量が抑えられたことから、2016年に風況のよい北海道では新規接続申請分から出力制御が無制限でかかる状況であり、東北電力と九州電力も無制限出力制御の時期が迫っている。

 洋上システムの国内市場は、2014年の洋上風力発電専用FITの設定、2016年の港湾法改定など、市場環境が整い新規参入企業が増加しているが、北海道、東北、九州といった風況のよい地域は、陸上・洋上ともに系統容量不足のため、無制限出力制御またはその対象となっており、開発が停滞しているという。 (編集担当:慶尾六郎)

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