【2017年の展望】「拡大路線」に限界?ローソン・ファミマがとる戦略とは

2017年1月3日 22:56

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記事提供元:エコノミックニュース

全体に低調な小売業界の中で、数少ない成長業界であるコンビニ業界。それでも経営統合や再編が進む背景には、やはり高齢化の影響がある。「より近くで」「より手軽に」という需要に応えるべく1店でも多く出店する。各社が拡大路線を続けているのにはそんな事情があるようだ。

全体に低調な小売業界の中で、数少ない成長業界であるコンビニ業界。それでも経営統合や再編が進む背景には、やはり高齢化の影響がある。「より近くで」「より手軽に」という需要に応えるべく1店でも多く出店する。各社が拡大路線を続けているのにはそんな事情があるようだ。[写真拡大]

 店舗数業界第2位と3位が入れ替わるという大きな動きがあった2016年のコンビニエンスストア業界。業界3位のファミリーマート<8270>と4位のサークルKサンクス<8270>(ユニーグループ・ホールディングス)が9月に経営統合。業界トップのセブンイレブン<8270>に肉薄している。3位に後退したローソン<8270>はスリーエフなど中堅コンビニとの提携を模索、「ダブルブランド」の店舗をオープンさせるなどして経営基盤の強化を図っている。

 それでは17年以降に業界で予定されている各社の動きを見てみよう。まずはセブンイレブン。世界16か国に4万1650店舗も構えているコンビニ業界の王者は17年度内にベトナムへの店舗展開を予定している。現地では早くも品質管理責任者やメディア担当者、生鮮食品担当者の募集がかけられている。9411店舗を展開するタイに始まり2016店舗のマレーシア、1760店舗のフィリピン、455店舗のシンガポールなど東南アジアでの事業拡大の新たな一手となる。

 セブンイレブンが「進出」するのは海外だけではない。18年には国内で唯一の未踏となっていた沖縄へ進出、県内全域でシェア35%にあたる300店規模の店舗体制を目指しているという。県内では沖縄ファミリーマートがココストアを経営統合して約300店舗、ローソン沖縄が191店舗展開しており、競争が激化することは必至だ。既に県内企業とフランチャイズ契約などの交渉を進めており、弁当の専用工場や現地法人を立ち上げる準備を進めている。

 ファミリーマートとローソンの2、3位の座を巡る争いからも目が離せない。2位を奪われたローソンはツクイ<2398>と連携して介護(ケア)拠点を併設した「ケアローソン」を17年度末までに30店舗展開することを目標とするなど、「新業態」での裾野拡大を目指す。介護相談窓口はツクイが運営し、コンビニは別事業者が運営する形態だ。店内にはコンビニの標準的な商品に加えてヘルスケア関連商品を販売。多世代が交流できるサロンスペースも併設するとしている。

 24時間営業のいち小売店という存在にとどまらず、より市民の生活に密着した存在に-。その一環だろうか、ローソンはことし11月に銀行業への参入も発表した。準備会社の資本金は10億円でローソンが95%、残りの5%を三菱東京UFJ銀行が出資。参入時期は明らかになっていないが、18年中の実現を目指しているとみられる。全国約1万2500店舗の拠点を活用して顧客の利便性を向上させ、新たなサービスを検討していく考えだ。

 ローソンの銀行業に参入にあたっては、セブン銀行の現状は無視できない。セブン銀行の15年度決算では、経常収益1104億円のうち1022億円が「ATM受入手数料」だ。銀行でありながら融資やローンなどをメインの事業に据えていない。ローソン銀行が目指すのも同様のモデルだと考えられる。受入手数料とは利用件数に応じた銀行等からの手数料が大部分だ。つまり他の金融機関から「“利用料”を払ってでも提携したい」と思われないといけないのだ。

 一方のファミリーマートは、ゆうちょ銀行の親会社・日本郵政グループとの提携することでサービスを向上させる考えだ。17年1月からは、ファミリーマートのATMでゆうちょ銀行の口座から現金を引き出す際の手数料を無料化。セブンイレブンやローソンのATMでは手数料がかかることから、2社からの「流入」を狙う形だ。ゆうちょ銀行の利用者には高齢者が多いこともポイントで、1人分の惣菜などの品揃えを増やすことでの売上増も期待されている。

 ファミリーマートと日本郵政が連携したということは、いずれは店舗で郵便局の役割を兼ねることになるのではないかという予測もされている。レジ横に郵便ポストを設置したり、店内にゆうパック配達用の宅配ポストをしたりするという。宅配ポストは再配達による配送コストを下げることにもつながる。

 ローソンとファミリーマートが拡大路線を歩み続けた16年。しかし最大手セブンイレブンには届かなかった。17年、2社は「市民目線」に戻り、新たなサービスを創造することでその価値を高めようとしている。(編集担当:久保田雄城)

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