【総合流通、コンビニの2016年3~8月期決算】総合流通の再建も、コンビニの前途も多難

2016年10月13日 21:27

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記事提供元:エコノミックニュース

小売業の総合流通、コンビニ業界主要各社の2016年3~8月期(第2四半期/中間期)決算がほぼ出揃った。

小売業の総合流通、コンビニ業界主要各社の2016年3~8月期(第2四半期/中間期)決算がほぼ出揃った。[写真拡大]

■総合流通はGMSの赤字を、他業態の利益が穴埋めする構造

 小売業の総合流通、コンビニ業界主要各社の2016年3~8月期(第2四半期/中間期)決算がほぼ出揃った。

 総合流通グループは、セブン&アイHD<3382>はトータルの連結決算では営業収益4.3%減、営業利益は5.2%増でも四半期純利益は60.4%減という大幅最終減益。イトーヨーカ堂やそごう・西武の不採算店舗の減損処理などで特別損失を約880億円も計上したため、そうなった。四半期純利益の通期見通しに対する進捗率は41.85%。中間配当は前年同期比で6.5円増配の45円。為替の円高で営業収益は703億円、営業利益は25億円押し下げられたという。アメリカのセブンイレブンは、ガソリン価格の低下により売上が日本円換算で463億円も減っている。

 GMSのイトーヨーカ堂、ヨークベニマルなどが属するスーパーストア事業は営業収益が0.8%減で、2.2%増の前年同期から悪化。営業利益は605.2%増(約7倍)で、87.4%減の前年同期と比べ採算は大きく改善している。その理由は適正な販売促進策への見直しと粗利率の改善。営業利益の通期見通しに対する進捗率は71.0%もある。

 しかし、既存店売上高がプラスの食品スーパー、ヨークベニマルやヨークマートを外してイトーヨーカ堂単体でみると、既存店売上高は-3.3%で、前年同期の-1.3%から悪化している。粗利益率はなんとかマイナスからプラスに改善したが、営業損益は34.15億円の赤字。通期では110億円の営業赤字を見込んでいる。営業収益でグループ全体の21.8%を売り上げても、営業赤字で業績の足を引っ張る厄介な存在だ。グループ主要企業の営業赤字はイトーヨーカ堂だけで、業績が急速に悪化した百貨店のそごう・西武でも4300万円の営業黒字を計上している。

 セブン&アイHDは鈴木敏文氏が会長職、村田紀敏氏が社長職を退いて井阪隆一氏が新社長に就任。中間期決算と同時に10月6日、「中期3ヵ年計画」を発表した。2020年2月期で営業利益4500億円(今期見通しは3530億円)、ROE10%という数値目標を掲げて、イトーヨーカ堂は2020年までに40店舗を閉鎖すると明記している。

 イオン<8267>は、トータルの連結決算では営業収益は0.9%増で前年同期の18.7%増と比べその伸びが大幅に鈍化。前年同期は66.6%の大幅増だった営業利益はわずか0.1%増。四半期純損益は前年同期の21.29億円の黒字から53.72億円の赤字に転落した。中間期では7年ぶりの赤字。中間配当は前年同期から1円増配の15円。

 業績不振の元凶はイオンリテール、イオン北海道、イオン九州、サンデーが属するGMS事業の不振で、営業収益は9.6%増だが、新規出店やダイエーからの店舗引き継ぎがなければ実質減収。イオンリテールは3~8月期の既存店売上高が2%減だった。特売日の変更で客離れ。低価格戦略で専門店やネット通販に遅れをとり、衣料品も日用品も販売がふるわなかった。営業損益は183億円の赤字。新規出店、店舗改装、ダイエー店舗の移管に伴うシステム変更の関連費用などでコストがかさみ、赤字幅は前年同期から96億円も拡大した。一方、食品スーパーなどSM・DS事業は、減収になってもコスト削減効果で営業利益は約2.2倍に伸び、ドラッグ・ファーマシー事業、総合金融事業も営業利益が2ケタ増と好調で、頼りになる存在。

 ユニーGHDは、9月1日にファミリーマートと経営統合してユニー・ファミリーマートHD<8028>になり、8月29日に上場廃止になったが、3~8月期決算は旧2社で別々に発表された。ユニーGHD分は、トータルの連結ベースでは営業収益0.3%減、営業利益28.5%減、四半期純損益は912億円の赤字で前年同期に比べて赤字幅が910億円も拡大している。コンビニエンスストア事業でサークルKサンクスのファミリーマートとの店舗統合に伴い、不採算店舗、店舗システムなどで多額の減損損失(特別損失)を計上しているため。「アピタ」など総合小売事業(GMS)は営業収益は0.9%減、営業利益は0.4%増で、イトーヨーカ堂やイオンリテールと比べれば、まだ健闘している部類。

 コンビニは新規出店が依然旺盛で、全社の全店売上高は今年8月まで42ヵ月連続プラスが続いている。それから開店後12ヵ月未満の新店分を除いた既存店売上高は、2015年4月から今年2月まで11ヵ月連続でプラスだったが、3月と5月はマイナスになった(日本フランチャイズチェーン協会「JFAコンビニエンスストア統計調査月報」)。コンビニが「新店も既存店も良い」と言われたのは前期までの話で、今期は全体的に既存店売上高が伸びなくなっている。

 セブン&アイHDのコンビニエンスストア事業(国内、海外のセブンイレブン)の営業収益は6.3%減。前年同期は2.7%減だった。営業利益は5.2%増で前年同期の11.3%増から伸び率は鈍化。営業利益の通期見通しに対する進捗率は51.8%である。セブンイレブン・ジャパン単体では営業収益5.6%増、営業利益3.0%増で、前年同期と比べて伸び率が鈍化している。

 ローソン<2651>は営業総収入5.8%増、営業利益5.0%減、四半期純利益14.1%増の増収、最終2ケタ増益。四半期純利益の通期見通しに対する進捗率は63.6%と高い。中間配当は前年同期比で2円50銭増配して125円とした。国内コンビニ事業の営業総収入は5%増で、「成城石井」は7%増と好調だったが、国内コンビニ事業の既存店売上高は0.9%減。営業利益ベースでは店舗改装コストが響いて減益。玉塚元一会長は決算説明会で営業減益について「計画内というイメージ」と述べている。最終増益の要因は、前年同期に不採算店舗の閉店に備える費用を前倒し計上して発生した減損損失が大きく減ったため。4月に神奈川県地盤のスリーエフと資本業務提携し、共同出資の新会社を設立。6月に関東のスリーエフ12店舗を譲り受けた。

 9月1日にユニーGHDと経営統合し、「サークルKサンクス」ブランドが2018年に「ファミリーマート」に統合される予定のファミリーマートは、ユニー・ファミリーマートHD<8028>のファミリーマート分の3~8月期決算が発表された。営業総収入は0.9%増、営業利益は6.5%減で前年同期の2ケタ増収増益から悪化。四半期純利益は18.6%減で、前年同期比で減益幅が圧縮している。中間配当は前年同期比1円増配の56円。昨年12月に吸収合併した「ココストア」からの衣替えが3~8月期で205店舗、累計310店舗と多かった。

 「サークルK」「サンクス」を運営していたユニーGHDのコンビニエンスストア事業の3~8月期のセグメント業績は、営業収益は7.0%増、営業利益は16.6%増。前年同期も前期は営業減益だったが、2ケタ増益で最後の意地をみせて9月1日に合流した。

■コンビニは大型再編を経て、「既存店強化」がますます重要に

 流通大手、コンビニの今期、2017年2月期の業績見通しは、中間決算発表時点でセブン&アイHDのスーパーストア事業、コンビニエンスストア事業とローソンが下方修正したが、上方修正はなかった。

 上半期は年初からの為替の円高、株安による停滞感に6月の英国のEU離脱が拍車をかけた。4月の熊本地震、8~9月に続けざまに日本列島に上陸した台風と、自然災害も個人消費の足を引っ張った。2017年4月に予定されていた消費税率の10%への再引き上げは延期されたが、直前数カ月の駆け込み需要が消えている。

 インバウンド消費も4月の中国政府の関税率引き上げの影響で、宝飾品や時計などの高額商品から化粧品や家庭用品にシフト。客数は維持していても客単価が落ちるという現象が起き、売上がピークアウトしている。それらを受けて下半期の小売業の業界環境は、なかなか厳しい。

 業態別に言えば、利益を稼げないどころか赤字を垂れ流すGMS(総合スーパー)はもはやリストラ対象でしかなく、流通業の主軸業態ではなくなった。セブン&アイHDは中期経営計画で2020年までにイトーヨーカ堂40店舗を閉鎖する。たそがれのGMSに代わって流通業の主軸業態になった感があるコンビニは、ファミリーマートが9月にユニーGHDと経営統合してサークルKサンクスを傘下におさめた。ローソンはスリーエフと資本業務提携を行い、ポプラとも提携した。王者セブンイレブンに対しM&Aやアライアンスで対抗しており、コンビニ業界の競争は下半期もホットに続きそうだ。

 総合流通グループのセブン&アイHDは営業収益4.6%減、営業利益0.2%増、当期純利益50.3%減の大幅減益を見込んでいる通期業績見通しも、年間予想配当90円も修正していない。しかしスーパーストア事業は営業収益3.1%増を0.5%に、営業利益は3.49倍から59.0%増に下方修正した。イトーヨーカ堂単体では110億円の営業赤字の見通しで、スーパーストア事業はヨークベニマルやヨークマートなど食品スーパーに助けられて、なんとか営業黒字を出せる見込み。

 イオンは売上高2.7%増、営業利益7.4%増、当期純利益66.4%増と最終利益V字回復見通しで修正なし。年間配当見通しは前期比2円増配の30円で修正なし。岡崎双一執行役は記者会見で下半期の見通しについて、構造改革に伴うダイエーからの移管店舗は「認知度が上がって売上が戻る」とみている。戦略を本格的に修正し、低価格品の投入で価格志向を強める消費者にアピールすればまだ望みはあると、下方修正はしなかった。

 コンビニのセブンイレブン(セブン&アイHDのコンビニエンスストア事業)は、通期見通しの営業収益は1.8%増から8.1%減に、営業利益は3.7%増から1.6%増に下方修正。セブンイレブンジャパン単体も、営業収益は前期の7.8%増から4.9%増へ、営業利益は前期の5.2%増から3.0%増へ伸び率が鈍化する見通し。「中期3ヵ年計画」では「既存店の質の向上に大きく舵を切る」とし、「新規出店の基準を高く見直す」「既存店舗の閉店を加速」と明記。今後は店舗数の拡大にブレーキがかかりそうだ。

 ローソンは営業総収入だけを下方修正し、60億円減で11.1%増から10.0%増に変わった。営業利益4.8%増、当期純利益13.1%増は修正なし。年間配当見通しは前期比で5円増配の250円で修正なし。すでにスリーエフ店舗の看板の「ローソン・スリーエフ」への掛け替えが始まっている。山陰地区では「ポプラ」54店舗の「ローソン・ポプラ」への合流も行われる。

 9月には三菱商事<8058>による公開買付け(TOB)に取締役会が賛同し、今期中に完了する見込み。三菱商事の保有比率は50%を超え、ローソンはその連結子会社になるが、上場は維持される。三菱商事との関係はさらに強化される見込みで、玉塚会長は「果実は来年くらいからどんどん出てくるのではないか」と話す。もともとダイエーグループだった時代を知っている社員やお客さんは、かなり少なくなっただろう。

 ユニー・ファミリーマートHDは9月1日のファミリーマート、ユニーGHD経営統合の効果を計算に入れた通期業績見通しを10月11日に発表した。通期の連結決算は旧ファミリーマートの3~8月期の業績と、統合後の9~12月の業績を合算する。営業総収入は9116億円、営業利益は565億円、当期純利益は219億円で、それぞれ旧ファミリーマートの前年同期比で113.2%増(約2.1倍)、15.9%増、4.0%増で、統合効果は小さくない。年間予想配当は112円で前期比で2円の増配。

 下半期はコンビニの新規出店予定が929店舗で、「サークルK」と「サンクス」の795店舗を「ファミリーマート」に衣替えする予定。「アピタ」など旧ユニーGHDのGMSは改装を行ってテコ入れ。10月に傘下のきものチェーン店、さが美の保有株式を投資会社のアスパラントGに売却すると発表した。

 コンビニは今期の大型再編をもって出店競争の時代は完全に終わり、今後は商品やサービスなど中身で勝負する既存店の強化が、ますます重要な戦略になっていくだろう。消費者は「近いから」ではなく、「良い商品があるから」「良いサービスがあるから」という理由で、コンビニを選ぶ。(編集担当:寺尾淳)

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