【注目銘柄】小野薬品工業は抗悪性腫瘍剤「オプジーボ」の効能追加で17年3月期増額余地

2016年9月15日 15:52

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 小野薬品工業<4528>(東1)に注目したい。抗悪性腫瘍剤「オプジーボ」が効能追加で大型新薬に成長した。17年3月期大幅増収増益予想で「オプジーボ」の新たな効能追加承認取得などを考慮すれば増額余地がありそうだ。株価は4月高値から反落して水準を切り下げた。高額な「オプジーボ」の薬価動向に対する警戒感、株式売り出しによる需給悪化懸念、競合に対する警戒感など悪材料が相次いだ。ただし売られ過ぎ感を強めている。収益拡大を再評価して一旦は反発局面が期待される。

■抗悪性腫瘍剤「オプジーボ」が成長

 医療用医薬品専業の中堅である。がん領域に参入し、14年9月抗PD-1モノクローナル抗体として世界に先駆けて発売した抗悪性腫瘍剤「オプジーボ点滴静注」が、15年12月「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」に対する効能追加承認を取得したことにより大型新薬に成長した。ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMS)社からのロイヤルティ収入も伸長している。

 その他の主要新製品には、2型糖尿病治療剤「グラクティブ錠」、骨粗鬆症治療剤「リカルボン錠」、関節リウマチ治療剤「オレンシア皮下注」、抗悪性腫瘍剤投与に伴う悪心・嘔吐治療剤「イメンドカプセル」「プロイメンド点滴静注用」、アルツハイマー型認知症治療剤「リバスタッチパッチ」、2型糖尿病治療剤「フォシーガ錠」などがある。また16年7月にはプロテアソーム阻害剤「カイプロリス点滴静注用」が、日本において「再発又は難治性の多発性骨髄腫」を対象疾患として承認取得した。

■開発中パイプラインでは「オプジーボ」の効能追加が進展

 開発中パイプラインの「オプジーボ(ONO-4538)」の効能追加では、腎細胞がんを対象疾患として米国・欧州で承認取得、日本・台湾で承認申請、血液がんの一つであるホジキンリンパ腫を対象疾患として米国で承認取得、日本・欧州で承認申請、頭頸部がんを対象疾患として日本・米国・欧州・台湾で承認申請している。また米国・欧州で多発性骨髄腫を対象疾患としたフェーズ3試験を開始、米国・欧州で胃食道接合部がんおよび食道がんを対象疾患としたフェーズ3試験を開始した。

 なお気管支喘息を対象疾患としてフェーズ2試験を国内外で実施していた「ONO-6950(ロイコトリエン受容体拮抗薬)」については、期待していた有効性が確認できなかったため開発を中止した。また門脈圧亢進症を対象疾患として海外でフェーズ1試験を実施していた「ONO-1266(S1P受容体拮抗薬)については、新薬の登場によって当初想定していた市場が見込めなくなったため、門脈圧亢進症を対象疾患とする開発は中止した。

■17年3月期第1四半期は「オプジーボ」が牽引して大幅増益

 今期(17年3月期)第1四半期(4~6月)の連結業績(IFRS)は、売上収益が前年同期比64.6%増の587億57百万円、営業利益が同47.7%増の172億44百万円、税引前利益が同38.1%増の182億45百万円、四半期利益が同44.5%増の137億04百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同44.7%増の136億80百万円だった。

 長期収載品は薬価改定や後発品使用促進策の影響を受けたが、効能追加承認を取得した「オプジーボ」の成長が牽引し、研究開発費、営業経費、安全性情報管理に係る経費などの増加を吸収して大幅増収増益だった。なお退職給付制度改定に伴う過去勤務費用の影響で前年同期に人件費が63億円減少していた影響を除くと、営業利益は3.2倍増益、税引前四半期利益は2.6倍増益、四半期利益は2.7倍増益、親会社の所有者に帰属する四半期利益が2.8倍増益だった。

■17年3月期通期予想据え置きだが「オプジーボ」効能追加で増額余地

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想(IFRS)は据え置いて売上収益が前期比61.6%増の2590億円、営業利益が同2.4倍の725億円、税引前利益が同2.3倍の750億円、当期利益が同2.2倍の560億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同2.2倍の558億円としている。通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上収益22.7%、営業利益23.8%である。ただし「オプジーボ」効能追加承認取得や「カイプロリス」承認取得を織り込んでいないため、通期予想に増額余地がありそうだ。

 配当予想は年間40円(第2四半期末20円、期末20円)としている。16年4月1日付の株式5分割を考慮して前期の年間80円を年間36円に換算すると、実質的に前期比4円増配となる。

■株価は悪材料で水準切り下げたが売られ過ぎ感、収益拡大を再評価

 株価の動き(16年4月1日付で株式5分割)を見ると、4月高値5880円から反落して水準を切り下げた。9月12日には年初来安値となる2581円50銭まで調整した。

 高額な「オプジーボ」の薬価動向に対する警戒感を強めたうえに、他のがん治療薬と併用した場合の死亡例報告と注意喚起(日本臨床腫瘍学会7月13日発表)に対する警戒感、BMS社における肺がんを対象とする臨床試験の失敗(現地8月5日発表)に対する警戒感、株式売り出し(8月17日発表)による需給悪化懸念、さらに競合に対する警戒感(9月9日メルクの「キイトルーダ」が悪性黒色腫治療薬として日本で承認見込みとの報道)など悪材料が相次いだ。

 週足チャートで見ると52週移動平均線を割り込み、8月8日には窓を開ける形で水準を切り下げた。ただし売られ過ぎ感を強めている。収益拡大を再評価して一旦は反発局面が期待される。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

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