ダイナムジャパンHD Research Memo(5):規制強化に対応するための代替機は不足している状況

2016年6月24日 08:40

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記事提供元:フィスコ


*08:44JST ダイナムジャパンHD Research Memo(5):規制強化に対応するための代替機は不足している状況
■2015年の主要なディベロップメントと今後の課題

(3)射幸性規制への対応

2015年10月から射幸性についての業界自主規制が開始された。概要は、射幸性の高さについて上限が引き下げられ、新基準に抵触する射幸性の高い遊技機をパチンコホールが自主的に撤去するという内容だ。

パチンコ機は大当たりが出る確率について様々なタイプがあり、これまで最も確率が低いものは400分の1というものであった。確率が低い分、大当たりが出た場合にもらえる球数も多くなるため、ハイリスクハイリターン機として消費者の人気を集めていた。この確率の上限値が引き下げられ、400分の1の確率の機械(通称、MAX機)は流通できなくなり、300分の1以下になる状況だ。

パチンコファンの中では、ハイリスクハイリターンこそがパチンコの醍醐味と考えている層が少なからず存在している。今回の規制により、これまでミドルリスクミドルリターンとされてきた機種が上限となってしまうため、客離れが起きることが一部で懸念されている。ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>はMAX機の割合が約15%と業界平均の約22%に比べて低く、反対に最も射幸性の低い100分の1機の構成比が約61%と業界平均の約41%よりも高い構成となっている。すなわち、射幸性の高さに頼らない営業を実施してきた。したがって、射幸性規制強化によるネガティブな影響は、業界平均に比べれば低いと弊社ではみている。

しかしながら、同社も避けられない問題が現在発生している。それは、代替機の不足だ。規制強化によりMAX機が回収されたところには代替機を設置することになる。その機種は新規制の上限になる確率300分の1機が当然本命視をされるが、現状ではメーカーの発売機種が少なく、調達が大幅に遅れる状況だ。ホール側としては不用意に不人気機種を入れてもリターンが見込めないばかりか、将来の二重投資につながりかねないため、慎重に対応せざるを得ない。その結果現在では、パチンコ機械が調達できず、新規出店を延期せざるを得ない状況となっている。

同社は2016年4月に3店舗を新規出店したが、今後は年末頃までは新規出店が停滞することを見込んでいる。同社は夢コーポレーションの買収で39店舗を獲得したが、結果的にはこの買収の持つ意義が、当初の想定以上に大きくなってきたものと弊社では考えている。

もう1つの懸念は、客離れの加速だ。数あるパチンコ機の中には、大ヒットした機械があり、それらはベテランから初心者まで幅広い層の人気を集めている。そうした人気機種が回収リストに含まれている。2016年3月に日本遊技機工業組合が公表した第2次回収リストには「CRスーパー海物語IN沖縄3HME」という機種が含まれている。これは全国に約76,000台が設置されている人気機種で、集客効果が高い機種だ。今後回収リストは第4次まで公表予定だが、今後もこのような人気機種の回収が続くと、パチンコホール運営に対する深刻な影響が懸念されるところだ。この点については、同社も含めてすべてのパチンコホール事業者にとって、ホール側の自助努力だけでは解決策を見いだせない難しい問題になるのではないかと、懸念している。

(4)熊本地震の影響と今後の対応

同社は熊本店内に13店舗を出店しているが、4月中旬に発生した熊本地震の影響で、5店舗が一時、営業休止を余儀なくされた。しかし、人的被害や建物損壊などの重大な被害はなかった。

同社は4月18日以降、営業休止の5店について、順次営業を再開し、現時点では全店舗、通常の営業を再開している。近隣の店舗の中には今も営業を休止している店舗も多い。同社が営業を早期に再開できた要因としては、各種インフラの早期復旧に加え、同社の店舗が木造平屋建てで、地震の揺れに対して強かったことが挙げられる。この点は、今後の震災リスクを考える上ではプラスと言えよう。

なお同社は、営業店舗の駐車場を車中泊避難者向けに開放するとともに、仮設トイレの設置や水・食料の提供などを通じて、被災者の支援にも注力している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)《YF》

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