2025年、団塊世代は後期高齢者に……その「見守りシステム」、いまだ“序章”

2016年4月30日 20:37

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記事提供元:エコノミックニュース

警備系企業などが導入するペンダント型の通報機を高齢者がつねに携帯して「万が一の際」に通報できるシステム例。写真は住友不動産が導入しているシステム

警備系企業などが導入するペンダント型の通報機を高齢者がつねに携帯して「万が一の際」に通報できるシステム例。写真は住友不動産が導入しているシステム[写真拡大]

 2025年、団塊世代が後期高齢者となり、一挙に「見守りシステム・サービス」の需要が膨らむ。内閣府発表の「平成27年版高齢社会白書」によると、日本では2025年に高齢化率(65歳以上人口割合)が30%を超える超高齢社会を迎える。要介護の割合が高まる後期高齢者が2179万人となり、現在より約530万人の増加が見込まれている。

 また、一般財団法人「リビングアメニティ協会サステナブル居住研究センター」の調査発表によると、現在ひとり暮らしの高齢者世帯は 479 万世帯で、総世帯数の約 1 割を占め、かつ65歳以上だけの世帯は942万世帯で、総世帯数の約2割を占めているという。見守りサービス体制整備が急務だ。

 日本における、こうした少子高齢化社会への進行は止められない。そのため、高齢者を対象とした「緊急通報サービス」や「安否確認サービス」などの見守りサービス、機器などが民間事業者により提供されはじめている。

 高齢者への緊急通報サービスや見守り、安否確認サービスは、主に自治体による住民向けサービスとして受託市場が形成されてきた。民間企業による高齢者「見守り・生活支援」に着目したマーケットは、今後の日本経済を牽引する成長有望分野でもある。

 住宅総合管理を目指す「HEMS(ホーム・エネルギー・マネージメント・システム)」やスマートメーターや家電などに採用されるIoT(モノのインターネット)技術、家事支援ロボット技術、街づくりやスマートシティ設計などと連携しながら、今後も多様化するニーズに対応し発展する。健康支援サービス、地域包括ケアや在宅介護市場など、さまざまな生活支援サービスとの連携融合が進むというのが大方の予想だ。

 民間事業者の「見守りサービス」代表が総合警備会社系だ。「セコム・ホームセキュリティ」や「ALSOKシルバーパック」などは、高齢者向けの見守りサービスとして、家の中でもペンダント型の通報機をつねに携帯して「万が一の際」に通報できるシステム。また、生活導線(トイレなど必ず通る場所)にセンサーを設置して、一定時間動きがない場合は異常信号を送信し、確認するサービスもある。いずれもセコムや総合警備保障と防犯基本契約し、そのオプションとして用意するサービスだ。

 次いで注目されるサービスは、公共インフラ会社系だ。東京ガスの高齢者見守りサービス「みまも~る」は、離れて暮らす高齢者家族のガスの利用状況を、携帯電話のメールやパソコンで毎日通知するサービス。日々のガスの使い方から、調理や入浴などの生活パターンを確認することができる”遠距離介護”をサポートするサービスとして利用する。月額1015円(税込み)とリーズナブルだ。

 NTT東日本「フレッツ・ミルエネ」は、HEMSを活用し、家庭の消費電力量等をパソコンやスマートフォン、光iフレーム等のタブレットに「見える化」するサービス。離れて暮らす家族もインターネットを通じて、電気の使用状況が確認でき「見守り」としても活用できる。また、設定した時間の電気量を判断し、メールで知らせる「電力変動お知らせ機能」もあり高齢者が見守られている感覚を意識しない「ゆるやかな見守り」を行なう。

 多くの企業が提供する「見守りサービス」のシステムは、ほぼセンサーやカメラを設置して、インターネットなどの通信を使って家庭のパソコンやスマートフォンで家族の異常を知らせるというシステム供給だ。

 家電などでは、エアコンや電気ポットにIoT機能を持たせて、高齢者家庭の異常を察知するというアイデアも生まれている。前述した東京ガスやNTT、都市水道局などの公共インフラを利用し、IoT通信を使って異常を知るというシステムもリーズナブルで安心感がありそうだ。

 センサーを使ったユニークな見守りシステムを「象印マホービン」が提供している。「みまもりほっとラインi-pot」だ。無線通信機を内蔵した「iポット」をお年寄りが使うと、その情報がインターネットを通じて、離れて暮らす家族に届く。家族はその様子を携帯電話やパソコンでいつでもどこでもさりげなく見守ることができる。

 まったく別の動きもある。高齢者見守りサービスの主役を担うのは、運輸業者かもしれない。そう感じさせる取り組みを、ヤマト運輸が進めている。個人宅への宅配サービスを活用した、独居高齢者の見守り支援だ。「圧倒的な訪問件数の多さを高齢者の孤独死防止につなげるという施策である。

 昨年4月に開催された「第29回日本医学会総会2015関西」の学術講演で、ヤマト運輸の社長・長尾裕氏が登壇して、宅配サービスの一環として高齢者の見守りサービスに着目すると述べた。

 同社は月間約1000万件の宅配荷物を扱い、セールスドライバーの数は、現在8万人に達する。全国の家庭を対象にする宅配サービスするという形態を生かし、宅配時に高齢者の状況を確認。異常を発見した場合、自治体や民生委員などに連絡する。今後、地方自治体や介護事業者と連携したサービスを提供するとした。新たなサービスのカタチが生まれ始めている。(編集担当:吉田恒)

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