ペットボトル原料のPETを分解する細菌を発見―新たなリサイクル技術の開発に期待―慶大・吉田昭介氏ら

2016年3月18日 12:03

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左:PET フィルム上で生育する201-F6 株。右:フィルム表面を洗浄後、観察される分解痕(慶應義塾大学の発表資料より)

左:PET フィルム上で生育する201-F6 株。右:フィルム表面を洗浄後、観察される分解痕(慶應義塾大学の発表資料より)[写真拡大]

 慶應義塾大学の吉田昭介助教(現・京都大学研究員)らの研究グループは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を分解して生育する細菌を発見した。この成果は、使用済みPET製品のバイオリサイクル技術の開発に貢献することが期待されるという。

 PETは石油を原料に製造され、ペットボトルや衣類などに汎用されている。しかしリサイクルされているのは、ペットボトルのみで、それはペットボトル生産量(613万トン)の37%、PET樹脂総生産量の4.1%に過ぎない。PET製品は安定であるため、自然界では生物分解を受けないとされてきた。

 今回の研究では、自然界の中からPET分解菌を探索した。その結果、PETくずを含む堆積物を投入した試験管で、PETフィルムに多種多様な微生物が集まり、分解している様子を発見し、この微生物群から強力なPET分解細菌を分離することに成功した。この菌は大阪府堺市で採取した環境サンプルから得られたことから、「Ideonella sakaiensis (イデオネラ サカイエンシス)201-F6株」と命名した。

 さらに、この細菌のゲノムを解読したところ、PETを加水分解することが知られている酵素と類似した遺伝子を発見し、この遺伝子から作られる酵素を調べたところ、PETを加水分解する能力があることが判明した。この酵素は従来知られていたPET加水分解酵と比べて、PETを好んで分解し、PETが頑丈な構造となる常温で高い分解活性を持つことが分かった。

 微生物を用いたPET分解は化学処理と比べてエネルギーの消費が小さく、環境にやさしい手法であるため、今回見出された微生物由来酵素の活性や安定性の強化が達成できれば、理想的なPETリサイクルの実現が近づくと考えられる。

 なお、この内容は「Science」に掲載された。論文タイトルは、「A bacterium that degrades and assimilates poly(ethylene terephthalate)」(和訳:ポリエチレンテレフタレートを分解・資化する細菌)。

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