カイコが絹タンパク質を生産する仕組みを明らかに―有用タンパク質の生産性向上に期待=生物研・坪田拓也氏ら

2016年2月25日 22:03

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左は通常の絹糸腺、右側はアンテナペディアを強く働かせた絹糸腺。白い矢印は中部絹糸腺、赤い矢印は後部絹糸腺。青い色は、通常は中部絹糸腺で始動している遺伝子の強さを示し、色が濃いほど、遺伝子が強く始動している。右の絹糸腺では、通常は中部絹糸腺でのみ始動する遺伝子が、後部絹糸腺でも始動するようになった。写真の右下の黒い線の長さは、それぞれ0.3 cm。(農業生物資源研究所の発表資料より)

左は通常の絹糸腺、右側はアンテナペディアを強く働かせた絹糸腺。白い矢印は中部絹糸腺、赤い矢印は後部絹糸腺。青い色は、通常は中部絹糸腺で始動している遺伝子の強さを示し、色が濃いほど、遺伝子が強く始動している。右の絹糸腺では、通常は中部絹糸腺でのみ始動する遺伝子が、後部絹糸腺でも始動するようになった。写真の右下の黒い線の長さは、それぞれ0.3 cm。(農業生物資源研究所の発表資料より)[写真拡大]

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 農業生物資源研究所(生物研)の坪田拓也氏、瀬筒秀樹氏らによる研究グループは、絹の原料となるカイコのマユを構成する成分が生産される仕組みの一端を明らかにした。この成果は、カイコで有用タンパク質を生産する際に生産性を向上させるのに役立つという。

 カイコは、数千年に及ぶ飼育の歴史の中で、1匹あたり数百ミリグラム(体重の約1~2割)ものタンパク質をマユとして生産するよう改良されてきた。マユの約4分の1はセリシンという水に溶けるタンパク質で、これは糸をつなぎ合わせる糊のような役割を持つ。

 遺伝子組換え技術を使ってセリシンと一緒に有用タンパク質を生産させると、糸に付着した形で吐き出されてマユになり、その後、マユを水に漬けることで、容易に高い純度で有用タンパク質を回収することができる。一方、セリシンを作る遺伝子の調節がどのように行われているかは不明で、タンパク質の生産量を増加に課題があった。

 今回の研究では、 セリシンが生産する中部絹糸腺という器官で、マユをつくる時期にのみセリシン遺伝子が始動する仕組みを調べた。その結果、カイコの胚発生のときに働く「アンテナペディア(Antp)」というタンパク質が、セリシン遺伝子の始動にも必要であることを発見した。また、通常はAntpをつくる遺伝子が働いていない絹糸腺の後部(後部絹糸腺)で、Antp遺伝子を人為的に働かせたところ、セリシンが生産されるようになった。さらに、セリシン以外の複数のタンパク質を作る遺伝子(タンパク質遺伝子)も、Antpの働きで始動することが分かった。

 今回明らかになったAntp遺伝子が様々なタンパク質遺伝子を活性化させる仕組みを利用して、絹タンパク質の4分の3を生産する後部絹糸腺でも水溶性のセリシンとともに有用タンパク質を生産することができれば、生産量を向上させることが可能になる。

 研究チームは今後、セリシン遺伝子が中部絹糸腺で働く本来の仕組みを活用し、Antpを中部絹糸腺で強く働かせる技術の開発を進める予定となっている。

 なお、この内容は「The Journal of Biological Chemistry」に掲載された。論文タイトルは、「A Hox gene Antennapedia regulates expression of multiple major silk protein genes in the silkworm Bombyx mori. The Journal of Biological Chemistry」(和訳: Hox 因子Antp はカイコの複数の主要な絹糸タンパク質遺伝子の発現を制御する)。

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