太陽光発電やZEHの次にくる「環境に優しい家」

2016年2月13日 22:12

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記事提供元:エコノミックニュース

 経済性や利便性、快適性など、住宅に求めるものは人それぞれだが、近ごろでは一つのキーワードとして「環境に優しい家」への関心が高まっているようだ。

 「環境に優しい家」とは、どのような家だろうか。例えば、太陽光発電搭載住宅やネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)などは、環境に配慮した住宅の代表的なものだが、かといって、そういった最新の設備を導入した住宅だけが「環境に優しい」わけではない。

 とくに、地域密着型の工務店やハウスメーカーでは近年、莫大な資本力を誇る大手の住宅メーカーとは違った発想と工夫で「環境に優しい住宅」を提案するケースが増えているようだ。

 官民一体で活動している「埼玉県住まいづくり協議会」が2015年末に行った「第3回埼玉県環境住宅賞」の入賞作品からその建築事例を見てみる。

 最優秀賞に選ばれた株式会社小林建設が埼玉県本庄市に建築した「本庄の家」では、建設地の気候データをもとに、風の向きや日照を計算して間取りを設計し、風と陽を巧みに取り込みながら、軒の出を調整するなどで夏場の日差しを遮る工夫やち密な断熱を施すことで、真夏でも14畳のエアコン1台の冷房で充分に過ごしやすい環境を作り出している。

 また、入選の株式会社アキュラホームの「井戸水を利用した涼しい家」も面白い。同社は、カンナ社長の異名で親しまれる元大工の名物社長でもしられるハウスメーカーだが、この社長の自宅を実験棟として、様々な環境配慮への取り組みを実験している。その、社長自宅実験棟の数々の実証実験の中でも、とくに注目されるのが、昔懐かしい「井戸」だ。庭の植物や緑のカーテンへの水遣りや屋根への散水などの一般的な「涼」のほか、日差しをしっかりと遮る軒の出、コンクリート上に冷たい井戸水を流すことで、その上を通る空気も自然と冷やす、打ち水効果を狙ったクールスポットづくりなどを行った。他にも朝顔やゴーヤのツタを壁にはわせる緑のカーテンや着衣などへの工夫も組み合わせることによって、35度以上の猛暑日が続く真夏でも、エアコンの使用回数を6回に抑えることに成功しており、そこで学んだ工夫を実際に顧客にも提案しているのだという。

 さらに優秀賞の株式会社OKUTA LOHAS studio の「passivhaus(パッシブハウス)大宮堀の内」は、「明るく暖かく、いつでも太陽を感じられるような空間で過ごしたい。」をコンセプトに考えられたもので、これまでの日本の住宅では1階と2階、廊下など、家の中での場所の違いによる温度差に着目した住宅だ。床下エアコンと全熱交換換気システムによって空気を循環させ、換気による熱のロスを軽減。省エネ効果を最大限に高める工夫が施されている。また、冬場の低い日射も部屋の奥まで取り込むために吹抜けサンルームを設置するなど、必要に応じて日射遮蔽・日射取得をコントロールし、季節に合わせた暮らしを提案している。

 こうしてみると「環境に優しい家」は、経済性や快適性、さらには住民の健康面でも優れた家であることがわかる。エアコンの使用頻度を減らすことだけが、環境に優しいわけではないだろうが、環境に配慮する住宅を考えると、エアコンの使用頻度が自然に減るのかもしれない。少なくとも、太陽光発電システムを搭載して電気代が安くなるからといってエアコン使い放題の生活をしているようでは、環境にも健康にも良くないのは明らか。住む側も、住まいを提供する側も、設備や性能だけに頼らない「環境に優しい家」をもっと考えるべき時代になるつつあるのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)

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