自閉スペクトラム症の人は、対人距離を短く取る傾向がある―東大・浅田晃佑氏ら

2016年2月6日 23:40

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調査時の様子の模式図。参加者と研究者は向かい合い、参加者はこれ以上近付くと不快になる対人距離を答えた。(東京大学の発表資料より)

調査時の様子の模式図。参加者と研究者は向かい合い、参加者はこれ以上近付くと不快になる対人距離を答えた。(東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京大学の浅田晃佑特任研究員らの研究グループは、自閉スペクトラム症の人は、そうでない人に比べて、不快と感じる対人距離が短いことを明らかにした。

 人は他者と接する際に、さまざまな対人距離を取る。この距離の範囲を「パーソナルスペース」と呼び、自身のパーソナルスペースに他者が入って来た場合、人はコミュニケーションを開始する、警戒心を強めるなど、何らかの反応を示す。

 今回の研究では、12歳から19歳の自閉スペクトラム症の人とそうでない人を対象に、これ以上他人に近付かれると不快と感じる地点を答えてもらう実験、そして自分がこれ以上他人に近付くのは不快だと感じる地点で止まってもらう実験を行った。

 その結果、どちらの場合も、自閉スペクトラム症の人は、自閉スペクトラム症でない人と比べて、不快であると感じる地点が近く、他者との対人距離を短く取る傾向にあることがわかった。また、自閉スペクトラム症の度合いが高いことと対人距離が短いことが関係していることから、対人距離は人によって差が見られることがわかった。

 さらに、自閉スペクトラム症の人もそうでない人も、近づく人がアイコンタクトを取った時は、対人距離を長く取ることも明らかになった。このことから、自閉スペクトラム症の人も自閉スペクトラム症でない人もアイコンタクトの情報を対人距離の調整に利用していることが明らかになった。

 研究チームは今回の研究結果を踏まえて、自閉スペクトラム症の人は、自分が他の人と比べて対人距離が短すぎないか意識することで、コミュニケーションの相手に好意や親密性を示していると誤解を与えることを避けることができる可能性が考えらるとしている。

 なお、この内容は「PLOS ONE」に掲載された。論文タイトルは、「Reduced Personal Space in Individuals with Autism Spectrum Disorder」。

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