航空機の自動化でマニュアル操縦技術が低下?米運輸省監察総監室が訓練基準を設けるようFAAに勧告

2016年1月17日 19:47

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記事提供元:スラド

航空機の自動化は運行の安全に大きく寄与する一方で、操縦士による状況監視およびマニュアル操縦に関する訓練基準や能力判定基準が確立されていないとして、米運輸省の監察総監室が連邦航空局(FAA)に勧告している(Office of Inspector General Audit Report: PDFThe Vergeの記事The Registerの記事)。

報告書では冒頭で2013年に発生したアシアナ航空214便の事故を例に挙げ、自動操縦に慣れた操縦士は想定外の状況になった場合やマニュアル操縦への切り替えが必要になった際にミスをすることがあると指摘。これにより、操縦士に対するマニュアル操縦の訓練が十分に行われているかどうかという点について、業界の専門家の間で懸念が高まっているという。

FAAは自動化されたフライトデッキの使用についてさまざまな基準を設けており、操縦士に対しては運航するすべての航空機について訓練を義務付けている。ただし、自動化フライトデッキの操作・監視方法に関する訓練が適切に行われる一方で、マニュアル操縦の技術が維持できているかどうかといった点をFAAが確認するための手順は用意されていない。

たとえば、調査が行われた19のフライトシミュレーターによる訓練プランのうち、自動化フライトデッキの監視に言及しているものは5プランのみだったという。また、FAAでは航空会社に対し、マニュアル操縦の機会を増やすことを2013年に要請しているが、実際にどの程度の時間マニュアル操縦が行われたのかは把握していないとのこと。

そのため、監察総監室のFAAに対する勧告内容としては、航空会社が操縦士の訓練と評価に使用可能な状況監視能力の判断基準を設けること、マニュアル操縦に関する十分な訓練の機会が与えられているかどうかを判断するための標準を設けることの2点となっている。 スラドのコメントを読む | テクノロジー | アメリカ合衆国 | 政府 | 交通

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