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歯の原基から、複数の歯を発生させる技術を開発―移植医療への応用に期待=理研・辻孝氏ら
胎齢14.5日のマウス臼歯歯胚の結紮による分割操作と器官培養6日目の写真。左:胎齢14.5日のマウス臼歯歯胚の真ん中を、完全に分断されないところまで細いナイロン糸で結紮した。右:器官培養6日目の天然歯胚および結紮歯胚の実体写真とHE(ヘマトキシリン・エオジン)で染色した画像。結紮歯胚には2つに分断された歯胚が認められる。(理化学研究所と東京医科歯科大学の発表資料より)[写真拡大]
理化学研究所の辻孝チームリーダーと東京医科歯科大学の森山啓司教授らによる共同研究グループは、マウスをモデルにした研究で、歯のもととなる原基(歯胚)の分割操作を行うことにより、1つの歯胚から複数の歯胚を発生させる歯胚分割技術を開発した。
現在の歯科治療は、主に人工の歯科材料を利用して形態の修復と機能の回復を図る医療技術として発展してきたが、これら治療法だけでは、歯の生理的機能を完全に回復させることが難しいため、生物学的な機能を保持し、周囲組織と親和性・適合性を持つ「歯科再生治療」の開発、臨床応用が求められている。
今回の研究では、マウスから摘出した胎齢14.5日の臼歯歯胚の真ん中を完全に分断されないところまで細いナイロン糸で結紮し、器官培養を行ったところ、6日後には上皮組織に囲まれ、完全に分断された2つの歯胚が発生した。さらに、結紮歯胚をマウス腎皮膜下に移植したところ、30日後にはエナメル質、象牙質、歯槽骨を持ち、歯根膜や歯槽骨に囲まれた正常な組織構造を持つ独立した2つの歯が形成されることが明らかになった。
今後は、この方法をヒトに応用することで、先天性歯胚欠損や歯の喪失患者の自己歯胚を用いて免疫学的拒絶反応を受けることがなく、歯の数を増やせるようになる可能性がある。研究グループは、今回の研究から臨床応用に近い歯科再生療法へと発展することが期待できるとしている。
なお、この内容は「Scientific Reports」に掲載された。論文タイトルは、「Functional tooth restoration utilising split germs through re-regionalisation of the tooth-forming field」。
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