過冷却された水の微細構造を明らかに―岡山大・松本正和氏ら

2015年11月28日 21:48

印刷

氷の構造(左)と多胞体構造(右)の一部分。1つの球が水1分子を表し、棒が水素結合を表す。六角形のつながり方が異なる。(岡山大学の発表資料より)

氷の構造(左)と多胞体構造(右)の一部分。1つの球が水1分子を表し、棒が水素結合を表す。六角形のつながり方が異なる。(岡山大学の発表資料より)[写真拡大]

 岡山大学の松本正和准教授らの研究チームは、計算機シミュレーションにより、過冷却された水の微細な秩序構造を解明した。

 水は、4℃以下に冷やすと膨張する特異な性質を持っている。また、液体のまま0℃以下に過冷却した場合にも膨張は続き、実際、水を急冷してできるアモルファス氷(非晶質の氷)の密度は、結晶の氷と常温の水の中間になる。しかし、流動性のある過冷却水が、どのような構造になっているのかは明らかになっていなかった。

 今回の研究では、計算機シミュレーションにより、水を過冷却すると「拡張多胞体」と呼ばれる、1ナノメートル程度の秩序あるクラスタが徐々に増え、不均一な構造となることが明らかになった。また、グラフマッチングという手法を用い、液体のなかの乱れた構造を網羅的に分類して、拡張多胞体が過冷却水やアモルファス氷で最も主要な秩序構造であることも示した。

 水には、冷やすと徐々に顕著になるさまざまな特異な性質が知られているが、それらの性質が今回解明された構造に由来すると考えると、従来よりも明確で一貫した説明ができるようになることが期待される。

 なお、この内容は「Physical Review Letters」に掲載された。論文タイトルは、「Chiral ordering in supercooled liquid water and amorphous ice」。

関連記事