屋久島で日本では知られていなかったラン科植物を発見―写真家の山下大明氏

2015年11月23日 20:51

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屋久島で発見された日本新産のラン科植物「タブガワヤツシロラン」(京都大学の発表資料より)

屋久島で発見された日本新産のラン科植物「タブガワヤツシロラン」(京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 屋久島在住の写真家である山下大明氏は、日本では知られていなかったラン科植物を発見し、京都大学の末次健司特定助教らによる現地調査によって、この植物はこれまで台湾の一部地域でしか発見されていなかった「Gastrodia uraiensis」であることがわかった。

 植物の中には光合成をやめ、菌類に寄生して一方的に栄養を搾取するもの(菌従属栄養植物)も存在する。菌従属栄養植物は光合成を行わないため、花期と果実期にしか地上に姿を現さず、見つけることが非常に困難である。

 2015年4月、屋久島在住の写真家である山下大明氏は、鹿児島県熊毛郡屋久島町東部の愛子岳椨川流域と女川流域の低地照葉樹林で、日本では全く知られていなかったラン科植物を発見した。この知らせを受けた末次特定助教は、山下大明氏と屋久島学ソサエティ副会長の手塚賢至氏とともに現地調査を行い、標本を精査した。

 その結果、この植物はラン科のオニノヤガラ属に属し、これまで台湾の一部地域でしか発見されていなかった「Gastrodia uraiensis」であることがわかった。そして、和名として、発見場所の「椨川(タブガワ)」を冠し、発見者である山下大明氏が「タブガワヤツシロラン」と命名した。

 研究メンバーは、「屋久島が大自然に包まれた島であることは、皆さんご存知のとおりですが、低地の照葉樹林の価値はまだまだ正しく認識されているとはいえません。事実、発見場所に隣接するスギ植林地は伐採されており、環境の変化も懸念されます。豊かな森とそこに棲む菌類に支えられた『タブガワヤツシロラン』の発見は、屋久島の低地照葉樹林の貴重さを再認識させるものです」とコメントしている。

 なお、この内容は「Acta Phytotaxonomica et Geobotanica」に掲載された。

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