ナノサイズの虹を形成することに成功―北大・笹木敬司氏ら

2015年11月15日 19:07

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光の色によって2つのナノスポットがオン・オフする様子を直接観測することに成功したデータ。(北海道大学の発表資料より)

光の色によって2つのナノスポットがオン・オフする様子を直接観測することに成功したデータ。(北海道大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京大学の田中嘉人助教、北海道大学の笹木敬司教授らによる研究グループは、光を1万分の1ミリメートルサイズまで絞り込むとともに、ナノサイズの虹を形成することに成功した。

 色には物質の特性が現れるため、色の分析(スペクトロスコピー)は、有機物・半導体・金属などの材料の開発や化学反応・生命現象の解析に不可欠な技術であり、様々な技術が開発されている。しかし、光の波の特性を利用して色を分類する従来のセンサーや通信デバイスでは、物理的な限界(回折限界)によって数十マイクロメートル(100分の1ミリメートル)より小さいサイズにすることはできなかった。

 今回の研究では、まず最先端超精密加工装置で特殊な形状(ダブルギャップ)に加工した金のナノ構造体に光を当てることにより、光が金属に纏わり付く現象(プラズモン)を利用してナノ構造体の2つのギャップ(空隙)に光をナノメートルサイズまで絞り込んだ。

 さらに、数ナノメートルの空間における光の分布を色毎に画像化する超解像分光イメージング装置を開発し、光の色によって2つのナノスポットがオン・オフする様子を直接観測することに成功した。また、ギャップの個数を増やすと複数の色が分類できることをシミュレーション解析により明らかにした。7つのナノギャップ構造体で7色の光を分離するとナノサイズの虹を作ることができる。

 今後の展開として、ナノサイズの空間で色を分類することができれば、ナノ粒子や生体分子個々の色分析(スペクトル分析)や化学反応・生命現象のセンシング解析が可能になり、材料科学・生命科学の研究開発に貢献することができる。また、情報通信分野でも、超小型カラー撮像素子、波長多重通信用の光回路デバイスの超集積化に応用でき、次世代の情報通信デバイスの開発に展開することが期待される。

 なお、この内容は「Nano Letters」に掲載された。論文タイトルは、「Nanoscale Color Sorting of Surface Plasmons in a Double-Nanogap Structure with Multipolar Plasmon Excitation」。

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