持久力が高い高齢者ほど、脳の認知能力が高い―筑波大・征矢英昭氏ら

2015年11月3日 19:29

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実験の様子。A:漸増運動負荷試験の様子。B:ストループテスト中の様子。C:光トポグラフィを前額部につけた時の測定チャンネル。緑丸で囲んであるチャンネルが前頭前野背外側部の活動を測定しているチャンネルであり、今回はこれらのチャンネルから得られたデータを、左右の半球毎に統合して解析に用いた。(写真:筑波大学の発表資料より)

実験の様子。A:漸増運動負荷試験の様子。B:ストループテスト中の様子。C:光トポグラフィを前額部につけた時の測定チャンネル。緑丸で囲んであるチャンネルが前頭前野背外側部の活動を測定しているチャンネルであり、今回はこれらのチャンネルから得られたデータを、左右の半球毎に統合して解析に用いた。(写真:筑波大学の発表資料より)[写真拡大]

 筑波大学の征矢英昭教授と中央大学の檀一平太教授の共同研究グループは、高齢期の男性では、身体の持久力が高いほど認知機能が高いことを発見した。

 高齢者の認知機能低下や認知症患者の増加は、大きな社会的問題となっている。その中で、年を重ねてもなお認知機能を高く保っている高齢者に共通する要因に関心が集まっており、近年、心血管機能つまり持久力を高めるような習慣的な有酸素運動は認知機能の維持増進に有効であることが報告されいる。

 今回の研究では、ある目的のために思考や行動をコントロールする能力「実行機能」に着目し、60名の健常な男性高齢者を対象に、運動負荷試験による換気性作業閾値の測定とストループテストによる実行機能測定を行った。

 その結果、換気性作業閾値が高い高齢者はストループ干渉時間が短いこと、つまり持久力の高い高齢者は実行機能が高いことが明らかになった。また、換気性作業閾値が高い高齢者ほど前頭前野外拝側部の脳活動パターンが左優位であること、つまり持久力が高い高齢者は課題遂行時に若者型の脳活動をしていること、脳活動パターンが左優位の高齢者ほどストループ干渉時間が短いこと、つまり若者型の脳活動をしている高齢者ほど実行機能が高いこともわかった。

 研究グループは今後、運動トレーニングによる持久力の変化と認知機能の変化の関係性を見ることで、持久力を高めることが脳の活動を若返らせ、認知機能向上につながるかを確認することが重要な検討課題であるとしている。また、男性の方が持久力の個人差が大きいため持久力と認知機能の関係を調べやすいため、本研究では男性を対象に実験を行ったが、今後は女性の高齢者でも同様の効果が見られるのか検討する必要があるとしている。

 なお、この内容は「NeuroImage」に掲載された。論文タイトルは、「The association between aerobic fitness and cognitive function in older men mediated by frontal lateralization」。

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