レム睡眠の意義を初めて科学的に示すことに成功―筑波大・林悠氏ら

2015年10月27日 17:37

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今回の研究成果の概念を示す図。哺乳類・鳥類に固有の記憶学習・脳発達のメカニズムとして、レム睡眠によるデルタ波の誘導という現象が明らかとなった。(筑波大学の発表資料より)

今回の研究成果の概念を示す図。哺乳類・鳥類に固有の記憶学習・脳発達のメカニズムとして、レム睡眠によるデルタ波の誘導という現象が明らかとなった。(筑波大学の発表資料より)[写真拡大]

 筑波大学の林悠助教、理化学研究所糸原重美チームリーダーらの共同研究グループは、レム睡眠とノンレム睡眠の切り替えを司る脳部位を発見し、レム睡眠にはデルタ波と呼ばれる脳回路の再編成に重要な神経活動をノンレム睡眠中に誘発する役割があることを明らかにした。

 レム睡眠とノンレム睡眠が見られるのは、複雑な脳を持つ哺乳類と鳥類のみであることはわかっているが、これら二つの睡眠の具体的な役割については明らかになっていなかった。

 今回の研究では、マウスの遺伝子操作技術を駆使した結果、レム睡眠からノンレム睡眠へと切り替えるスイッチの役割を担う神経細胞を発見した。そこで、レム睡眠を操作できる世界初のトランスジェニックマウスを作成して、レム睡眠の効果を解析した。

 その結果、レム睡眠を操作した影響は、デルタ波という脳波に現れることがわかった。デルタ波はレム睡眠と同様に哺乳類と鳥類に固有の現象であり、神経細胞同士の連絡であるシナプスを強め、学習や記憶形成を促す作用が知られている。デルタ波はノンレム睡眠中に最も生じやすいが、レム睡眠を無くすと、次第にノンレム睡眠中のデルタ波が弱まり、逆にレム睡眠を増やすと、デルタ波が強まることがわかった。

 今後、今回開発したトランスジェニックマウスの学習能力や記憶力を検証することで、レム睡眠が記憶や学習にどのように寄与するのかについても、さらなる解明が期待される。

 また、様々な疾患でみられるレム睡眠の異常とその他の症状との関連を検討することで、発症のメカニズムの理解や治療法の開発につながることも期待される。

 なお、この内容は「Science」に掲載された。「Cells of a Common Developmental Origin Regulate REM/non-REM sleep and Wakefulness in Mice」(共通の発生学的起源由来の細胞群による睡眠覚醒とレム/ノンレム睡眠の制御)。

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