他人の視線が無意識に注意をそらす神経メカニズムを明らかに―京大・佐藤弥氏ら

2015年10月14日 20:20

印刷

今回の研究で実施した課題のイメージ。閾下呈示では、意識的には見えないほどの短時間だけ、被験者に視線が呈示された。(京都大学の発表資料より)

今回の研究で実施した課題のイメージ。閾下呈示では、意識的には見えないほどの短時間だけ、被験者に視線が呈示された。(京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都大学の佐藤弥特定准教授らの研究グループは、他人のそれた視線を見ると、無意識に注意がそらされる現象の神経メカニズムを明らかにした。

 他者の視線を見ると、つられて視線の方向に注意がそらされることがある。佐藤特定准教授らのグループは、以前行った行動実験で、この視線による注意の移動が、無意識(視線が見えないサブリミナルの状況)でも起こることを発見していた。しかし、無意識の視線による注意の移動がどのような脳のメカニズムによって起こるのかは分かっていなかった。

 今回の研究では、まっすぐな視線が閾下(刺激を知覚できない、サブリミナル)、閾上(刺激を知覚できる)でどう変化するのか、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて調べた。

 閾下では、テレビの1コマ(33ms)よりも短い時間だけ視線を呈示し、意識的には見えないが脳には刺激が入力される状況を作った。その結果、閾上条件でも閾下条件でも、それた視線の方向が標的位置に一致する場合に、まっすぐな視線の場合より反応時間が短縮されること、つまり意識的に見えた場合も見えない場合も、視線によって注意がそらされることが明らかになった。

 さらに、注意の移動に関わることが知られている両側の新皮質ネットワーク(中前頭回や下頭頂小葉や上側頭回を含む)は、閾上条件でも閾下条件でも、それた視線に対してまっすぐな視線よりも強い活動を示すことが分かった。また、無意識での視覚情報処理を担当していると考えられている皮質下の領域(上丘や扁桃体を含む)は、閾下条件の場合に特に、それた視線に対してまっすぐな視線よりも強い活動を示すことが分かった。

 こうした結果から、無意識の視線による注意の移動が起こるために、意識的な場合と共通する注意の脳内ネットワークと、意識的な場合とは異なる脳内の別の情報処理経路が関与していることが示唆される。

 研究メンバーは、「目は『心の窓』で、ヒトのコミュニケーションに欠かせません。本研究は、視線により無意識で注意がそれる神経メカニズムを世界で初めて明らかにするもので す。今回の研究成果を基にして、自閉症スペクトラム障害での視線処理の問題の神経基盤を解明する、といった展開が期待されます」とコメントしている。

 なお、この内容は「NeuroImage」に掲載された。論文タイトルは、「Neural mechanisms underlying conscious and unconscious attentional shifts triggered by eye gaze」。

関連記事