筑波大、昆虫の口器の祖先型を明らかに―口器の進化について新説を提唱

2015年9月2日 21:38

印刷

シンクロトロンμCT法で得られたトビムシ目、コムシ目の口器の三次元構築像。(筑波大学の発表資料より)

シンクロトロンμCT法で得られたトビムシ目、コムシ目の口器の三次元構築像。(筑波大学の発表資料より)[写真拡大]

 筑波大学の町田龍一郎教授、アレクサンダー・ブランケ特別研究員らは、昆虫類の口器の祖先型を明らかにし、昆虫類の口器の進化に関する新たな見方を提唱した。

 昆虫は地球上で最も多様化した生物であり、これまでに記載されている全動物種の約75%を占めている。その理由の一つが、多種多様な食物が利用可能な口器の多様化であり、口器の進化は昆虫類を理解する上できわめて興味深いテーマであると言える。

 今回の研究では、原始的な昆虫類である「無翅昆虫類」のトビムシ目、コムシ目の口器を、大型放射光施設SPring-8などの放射光施設で、シンクロトロンμCT法を用いた詳細な観察を行った。その結果、昆虫類の原始系統群であるトビムシ目、コムシ目の両目で、小顎突起の存在を確認し、この突起により、小顎と大顎が連関することで口器が機能することから、両目の口器は口器の構造的連関(SMI)で機能することが明らかとなった。

 研究メンバーは、最近、同様に原始的系統群であるイシノミ目の口器にもSMIを見出しており、昆虫類の口器のグラウンドプランは単純な「噛み口」であるとしてきた従来の理解は誤りであり、最初に生まれたのはSMIにより機能する口器であり、それからトンボやバッタなどに見られるような、SMIを失った「噛み口」が現われ、その後、二次的に多様なタイプのSMI、すなわち、セミ、ハチ、チョウなどの「吸収口」、ハエなどの「舐め口」が現れたと提唱している。

 今後は、他の無翅昆虫類や有翅昆虫類の重要なグループの口器も、シンクロトロンμCTを用いて詳細に機能形態学的に解明されると期待されている。

 なお、この内容は「Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences」に掲載された。論文タイトルは、「Structural mouthpart interactions evolved already earliest lineages of insects」(昆虫類の口器の構造的関連は初期系統ですでに獲得されていた)。

関連記事