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京大、特定地域のニホンザルに野菜や柑橘類の苦味をわからない個体がいることを発見
TAS2R38遺伝子型の違いとPTC苦味溶液に対する反応(京都大学の発表資料より)[写真拡大]
京都大学の鈴木(橋戸)南美博士後期課程学生、今井啓雄准教授らの研究グループは、ニホンザルに、柑橘類やアブラナ科野菜に含まれる苦味物質に類似したPTC(フェニルチオカルバミド)に対する苦味を感じない個体がいることを発見した。
苦味感覚は本来、植物などがもつ毒物に対する防御機構として動物の味覚に備わっているが、柑橘類に含まれる苦味物質や、アブラナ科野菜に含まれる苦味物質に類似したPTC(フェニルチオカルバミド)に対しては、苦味を感じる個体と感じない個体がいることが、様々な霊長類で分かってきた。
今回の研究では、PTCの苦味を受容するTAS2R38遺伝子に変異が起きると、機能的なタンパク質をつくらないこと、この変異遺伝子を持つ個体はPTCに対する苦味感覚が減弱していることを明らかにした。
さらに、日本の17地域で、約600個体のDNAを用いた分子進化的解析により、この変異遺伝子は紀伊半島西部の群れに限局していること、この地域では変異遺伝子が約30%の頻度を持つこと、変異遺伝子は1万3千年前以降に出現し、急速にこの地域に広がったことを示した。
研究メンバーは、「ニホンザルの集団内において、特定の苦味受容体の機能を失うことが、特定の生息環境では有利に働き、集団中に急速にこの機能消失変異が広がったことを明らかにしました。本来持つべき機能を失うことが逆に有利にはたらくという大変興味深い現象です。本研究で示した、『機能喪失による環境適応』のように、今後も、このような、生物の環境適応の背景にある分子メカニズムの解明を目指していきたいと考えています。」とコメントしている。
なお、この内容は「PLOS ONE」に掲載された。論文タイトルは、「Rapid Expansion of Phenylthiocarbamide Non-Tasters among Japanese Macaques」。
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