東大など、有機分子の形を室温で可視化することに成功

2015年7月29日 19:15

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原子間力顕微鏡(AFM)の模式図(東京大学の発表資料より)

原子間力顕微鏡(AFM)の模式図(東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京大学の杉本宜昭准教授、大阪大学の岩田孝太大学院生らの研究グループは、固体表面に吸着した有機分子の形を室温で可視化できることを示した。

 原子間力顕微鏡は、鋭い針を観察対象に近づけて、針先端の原子と表面の原子との間に働く相互作用力を測定することで、表面を観察する顕微鏡である。これまで原子間力顕微鏡を用いて、天然の有機分子の同定、分子内の電荷密度の可視化、結合次数の同定、化学反応後の分子の同定などの研究が立て続けに報告されたが、これらの研究は全て-268℃という極低温環境下で行わざるを得なかった。

 今回の研究では、分子の端にある酸素原子が表面のシリコン原子と結合して、架橋構造をとっている様子を原子間力顕微鏡で観察したところ、5つのベンゼン環の炭素原子同士を結ぶ結合手が可視化された。また、シリコン表面に吸着したPTCDA分子の電荷密度の理論計算の結果からも、炭素原子同士を結ぶ結合手の部分で電子濃度が高く、針が近づくと電子同士の反発により大きな斥力が働くことが示された。

 今後は、どの分子がどこでどのように反応するのかを追跡することで触媒反応の理解が飛躍的に進み、より良い触媒材料の開発につながると期待されている。

 なお、この内容は「Nature communications」に掲載された。論文タイトルは、「Chemical structure imaging of a single molecule by atomic force microscopy at room temperature」。

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