サルにもヒトと同じように「盲視」が起きていることが明らかに

2015年6月18日 18:49

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盲視のイメージ。本人は見えていないにもかかわらず、眼球運動など一部の視覚機能は脳損傷から回復することがある。これを盲視と呼ぶ。(生理学研究所の発表資料より)

盲視のイメージ。本人は見えていないにもかかわらず、眼球運動など一部の視覚機能は脳損傷から回復することがある。これを盲視と呼ぶ。(生理学研究所の発表資料より)[写真拡大]

 自然科学研究機構の吉田正俊助教らは、言葉に依らない新たな視覚テストを開発し、脳の視覚野に障害をもったサルにおいてもヒトと同様の盲視が起きていることを明らかにした。

 脳の視覚野に障害をもったサルは、ヒトと同じように実際には「見えていない」はずの視野にある光点の位置に正しく目を向け、その位置を記憶できる。しかし、そもそも本当にこのサルが見えていないのかどうかを確認することは困難であった。

 今回の研究では、言葉を使わなくても「視覚情報が見えているかどうか」を評価することが可能な行動課題を開発した。その結果、視覚野に障害のあるサルは、光点が「上下どちらにあるか」を答える課題では正しく答えることができるが、光点が「あるか無いか」を答える課題はうまく答えられないことが分かった。

 さらに、この結果を「信号検出理論」という手法で客観的に評価したところ、光点の上下を判別する課題の処理能力のほうが、光点のある・なしを判別する課題の処理能力よりも高いことが明らかになった。

 研究メンバーは、「今回の研究で、動物にとって視覚世界がどのように見えているのか、その一端を垣間見ることができました。そして今回用いた手法は、将来的には言葉で意思を伝えることができない幼児や患者さんの意識を、彼らの行動から推測する手法の確立に繋がると期待できます」とコメントしている。

 なお、この内容は「Scientific Reports」に掲載された。論文タイトルは、「Signal detection analysis of blindsight in monkeys」。

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