京大、イヌは飼い主に協力しない人物を嫌うことを明らかに

2015年6月14日 20:58

印刷

飼い主と実験者がやり取りをする場面を見せる実験の概要を示す図。(京都大学の発表資料より)

飼い主と実験者がやり取りをする場面を見せる実験の概要を示す図。(京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都大学の千々岩眸博士後期課程学生・藤田和生教授らの研究グループは、イヌが、飼い主に対して協力的に振る舞わない実験者から食物をもらうことを回避し、自身の利益には関わらない場面で、第三者的視点から他者を感情的に評価することを解明した。

 イヌはヒトの行動に極めて敏感で、それはイヌ自身が利益を手にするからであると考えられるが、自身の利益に直接関係しない場面で、イヌはどれくらいヒトの行動に注意を向けているのかは明らかになっていなかった。

 今回の研究では、家庭犬54頭を3群に分けて、飼い主と実験者がやり取りをする場面を見せる実験を行った。その結果、イヌは、飼い主の援助を拒否する人物からのおやつは高い頻度で受け取らないということが分かった。自身の利益につながらない場面で、イヌがこのように感情的な社会的評価をすることが、今回初めて示された。

 研究メンバーは、「今回私たちは、イヌが、他者のやり取りの観察から、自身の直接的利益には無関係なところで、他者の社会的・感情的な評価をすることを発見しました。こうした第三者的評価はヒトのような発達した協力社会を可能にする一つの要因です。本研究はこの能力がイヌにも分有されていることを示したものであり、協力社会の進化の解明に重要な一石を投じるとともに、イヌとヒトのよりよい関係を構築する上でも、重要な資料になると考えています。」とコメントしている。

 なお、この内容は「Animal Behaviour」に掲載される予定。論文タイトルは、「Dogs avoid people who behave negatively to their owner: third-party affective evaluation」。

※飼い主と実験者がやり取りをする場面を見せる実験の詳細

 イヌの前で3人の人物が演技をした。中央に座る飼い主は、イヌにとって価値のない物体を入れた透明の箱のフタを開けようとする。なかなか開けることができず、一方の端に座る人物(応答者)に箱を差し出して援助を求める。

 援助条件では、応答者は箱を支えて援助し、その結果飼い主はフタを開けて物体を取り出すことに成功する。援助拒否条件では、応答者は顔をそむけて援助を拒否する。飼い主はフタを開けることに失敗する。統制条件では、飼い主は援助を求めることはせず、しばらく手を止める。その間応答者は理由もなく顔をそむける。飼い主はこの場合にもフタを開けることに失敗する。いずれの場合にも反対側に座っている人物(中立者)は何もしない。

 演技終了後、応答者と中立者は手のひらにおやつを載せてイヌに差し出した。援助条件と統制条件ではイヌはでたらめに人物を選んだが、援助拒否条件では、高頻度に応答者を避けて中立者からおやつを取った。

関連記事