東大、量子もつれによって時空が生まれていることを明らかに 統一理論への貢献に期待

2015年5月29日 16:20

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量子もつれと一般相対性理論の間の対応関係を示す図。赤い点は一般相対性理論の時空における局所データを表す。今回の研究では青い半球で表される量子もつれによってこれを計算する方程式を導いた。(クレジット:Jennifer Lin et al.)

量子もつれと一般相対性理論の間の対応関係を示す図。赤い点は一般相対性理論の時空における局所データを表す。今回の研究では青い半球で表される量子もつれによってこれを計算する方程式を導いた。(クレジット:Jennifer Lin et al.)[写真拡大]

 東京大学の大栗博司主任研究員らの研究グループは、一般相対性理論から導き出される重力の基礎となる時空が、さらに根本的な理論の「量子もつれ」から生まれる仕組みを解明した。

 私たちの世界には4つの力が存在しており、そのうち「電磁気力」「強い力」「弱い力」はミクロの世界を記述する量子力学によって記述できることが分かっている。ここに「重力」も加えて一つの理論で統一的に説明するためには、重力も量子化する必要があるとされてきた。

 今回の研究では、物理学者と数学者からなる研究グループが連携し、異なる場所にある粒子のスピンなどの量子状態が独立に記述できないという現象「量子もつれ」によって、重力理論と密接に関わる時空を生じさせていることを、計算によって明らかにした。

 研究メンバーは、「今回の論文は、量子もつれの現象と時空間の微視的構造との関係を、具体的な計算で明らかにしたものです。量子重力の研究と、情報科学との連携は、今後ますます重要になると考えられ、私自身、引き続き量子情報の研究者との共同研究を進めています」とコメントしている。

 今後は、本成果が、一般相対性理論と量子力学とを統一する理論の構築に向けた研究の前進に大きく寄与すると期待されている。

 なお、この内容は「Physical Review Letters」に掲載される予定。論文タイトルは、「Locality of gravitational systems from entanglement of conformal field theories」。論文のプレプリント:http://arxiv.org/pdf/1412.1879.pdf

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