【インタビュー・後半】佐藤繊維・佐藤正樹社長 私たちが「ギア」を始めた理由――山形県寒河江市に大型コンセプトショップを開業

2015年5月25日 11:12

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記事提供元:アパレルウェブ


ガラスを全面的に使った部屋には、世界各国のハイブランドが並ぶ

ハイブランドから伝統工芸まで 作り手の熱い思いをセレクトする

――「ギア」は、2つの棟で構成されていますが、まず「ギア1」の特徴について教えていただけますか?

 まず、「ギア1」の1階では、レディスとメンズのアパレル商品を置いているんですが、カジュアルからスーツ、デザイナーズブランド、雑貨まで幅広く扱っています。話題になっているブランドから、まだ日本に入ってきていないブランドまで、「この山形の店舗から発信していくぞ」という思いでセレクトしています。

 2階では、テーマによってそれぞれの部屋があります。ガラスを全面的に使った部屋には、素材にこだわり、世界の流行をつくり続けるハイブランドを並べました。その隣の部屋には、自社ブランドの「M&KYOKO」があり、色やテキスタイル、デザインなど、私と妻が作り上げる世界観を知っていただくことができます。

 部屋によって違う世界観を打ち出しているのは、「不思議の国のアリス」のように、扉を開けるとまた違う空間が広がる、そんなわくわくするような空間をお店の中で表現したいと思ったからです。

 音響や什器にもこだわっています。私たちの歴史を象徴する古い紡績機械があるかと思えば、最新の音響技術を取り入れたスピーカーもあります。このスピーカーは、ガラスを振動させることによって独特の音が出るんです。古いものと新しいものが混在し、それらが融合した空間を目指しました。

――「ギア2」の特徴を教えてください。「ギア1」とは違い、食器や雑貨を販売していますね。

 「ギア2」では、男性にも女性にも楽しんでいただけるようなライフスタイルの提案をしています。ゆっくりとお茶を飲みながら商品を見て頂けるように、カフェスペースも設けました。

 空間すべてのものを贅沢にするのはなかなかできないと思いますので、ちょっとしたところにこだわりを持ったものを取り入れることで生活が楽しくなると思います。「ギア2」でも、世界各国のブランドを取り入れています。洋の生活の中に和のものを取り入れたり、その逆も面白いですよね。

 和の食器ひとつとっても、和でも洋でもない新しいスタイルを持っていたり、日本の伝統的な職人によるものも、今の時代でも十分使える新しさを感じさせてくれるものが多くあります。私たちの店舗では、こうした日本の技術と感性をうまく表現しながら、新しいライフスタイルを提案していきたいと考えています。


クリエイターらによるこだわりの生活雑貨を並べた「ギア2」

 陶芸品や家具などは、山形の職人やクリエイターによるものをメインに取り入れています。山形の家具メーカー・天童木工社とのコラボレーションによるアイテムもあります。柳宗里による美しいデザインもありますし、「M&KYOKO」の生地デザインを使ったオーダーメイドの椅子もあります。

 従来日本で使われている椅子だと、10年、20年経っても破れない生地を求められることが多いんですが、私たちの椅子はいつでも生地を張り替えることができて、長く使ってもらえるようなものにしたいんです。その時代に合わせたデザインも楽しめるし、ものを大事にしたいという思いもあります。

 店舗に置いてある商品のベースには、ファッション性としっかりしたものづくりへのこだわりがあります。これは私たちの会社の考えと同じですし、私たちだから作れるお店だと思います。ターゲットは地元の方だけではありません。日本国内だけでなく、世界各国から来ていただき、ここだから買える日本の技術や美しさを感じていただきたいです。

世界へ発信するものづくりの拠点へ

――オープンに合わせてウェブサイトも開設しました。

 店舗はブランドを作っていく場所ですが、ネットでもそれを共有できる空間にしていきたいです。ここは山形ですが、東京にいても世界のどこにいても、ブランドや商品のストーリーが伝わるような空間をネットでも表現したいですね。

――「ギア」の今後のビジョンについて教えていただけますか。

 楽しい空間や新しい商業施設としてさらに広めていきたいですし、もっと多目的な場所にしていきたいと思っています。今はカフェスペースでお茶を楽しめるんですが、山形の食材を使ったレストランもやってみたいです。そば屋もいいですし、プチホテルもやってみたいですね。

 コミュニティーとして色々な人が集まり、例えば、手紡ぎや糸づくり、指編みなど、みんなが作家となって新しいものを創造したり、作り出せる空間を提供したいです。工場もあり、お店もあるけれど、もっと多目的に、精神的に満足できる空間を目指したいですね。

 日本は今、地方が過疎化していますが、地方にしかない自然の空気や水、安らぎがあります。だからこそ、日本各地はもちろん、世界各国から来ていただき、ここでしかできない糸作りを楽しめる空間を作ることは、日本の経済においてもすごく大事だと思います。

 若い人たちには夢を見てほしいし、作りたいものが作れる場を提供したい。さらに、実際にお店に立って、お客様に自分たちが作ったものを手にとっていただく機会も必要だと思います。これまでにない付加価値が生まれ、地方からものを発信していくことで、新しいマーケットを作っていかなければならないですね。

「ギア(GEA)」
住所:〒991-0053 山形県寒河江市元町 1-19-1
公式サイト:http://www.gea.yamagata.jp

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