東北大、カーボンナノチューブで生体分子活性を制御することに成功

2015年4月29日 13:02

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カーボンナノチューブ1本上におけるミオシンモーター活性の制御を示す図。(A)実験の概念図。カーボンナノチューブ1本を水中で観察し、カーボンナノチューブの片端だけを近赤外レーザーで照射すると、高い熱伝導率によって、カーボンナノチューブとその近傍の水やタンパクだけを局所的に加熱することができる。(B)計測システムの概要と計測結果。蛍光観察と暗視野像観察のための顕微鏡に、局所加熱用の近赤外レーザーを導入した(左)。この計測システムを用いて、カーボンナノチューブ1本上でミオシンによるアクチンフィラメントの滑り運動を観察した(右上)。滑り運動中に近赤外レーザーを0.2秒照射すると、照射時だけ運動が繰り返し加速されるのが観察された(右下)。このようにミオシンモーターの運動活性をリアルタイムで制御することができた。(東北大学の発表資料より)

カーボンナノチューブ1本上におけるミオシンモーター活性の制御を示す図。(A)実験の概念図。カーボンナノチューブ1本を水中で観察し、カーボンナノチューブの片端だけを近赤外レーザーで照射すると、高い熱伝導率によって、カーボンナノチューブとその近傍の水やタンパクだけを局所的に加熱することができる。(B)計測システムの概要と計測結果。蛍光観察と暗視野像観察のための顕微鏡に、局所加熱用の近赤外レーザーを導入した(左)。この計測システムを用いて、カーボンナノチューブ1本上でミオシンによるアクチンフィラメントの滑り運動を観察した(右上)。滑り運動中に近赤外レーザーを0.2秒照射すると、照射時だけ運動が繰り返し加速されるのが観察された(右下)。このようにミオシンモーターの運動活性をリアルタイムで制御することができた。(東北大学の発表資料より)[写真拡大]

 東北大学の井上裕一助教と石島秋彦教授らは、カーボンナノチューブ1本上で生体分子モーターの運動活性を観察し、レーザー照射によって運動速度を制御する新技術を開発した。

 カーボンナノチューブは、炭素原子からなる筒状の物質であり、導電性や弾性など優れた特性を持っている。その中でも熱伝導性は特出しており、金や銅より高い熱伝導率が報告されている。

 今回の研究では、ウサギ骨格筋から精製したミオシンをカーボンナノチューブ上に失活しないように吸着させ、カーボンナノチューブ自体もガラス上に固定した。そして、ATPと蛍光ラベルしたアクチンフィラメントを与えると、ミオシンラベルしたカーボンナノチューブに沿ってアクチンフィラメントが滑り運動するのが蛍光観察された。さらに、滑り運動中に、カーボンナノチューブの片端だけを、レーザー照射によって加熱したところ、アクチンフィラメントがカーボンナノチューブに沿って滑り運動する速度が、レーザー照射時だけ高速化することが分かった。

 今後は、より細く微小なカーボンナノチューブなどを用いて、細胞内の狙った分子1個だけの生きた活性を自由自在に操ることができるようになると期待されている。

 なお、この内容は「ACS Nano」に掲載された。論文タイトルは、「Single Carbon Nanotube-Based Reversible Regulation of Biological Motor Activity」。

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