北大など、歯や骨に強固に接着する多目的接着性人工骨を開発

2015年4月13日 22:20

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リン酸化プルランをキーマテリアルとした歯科用人工骨の治療効果(動物実験結果)。リン酸カルシウム顆粒や臨床で行われている歯周治療法を施しても、コントロール(未使用)の場合と同様に歯槽骨の回復は困難だが、リン酸化プルラン含有人工骨を用いると、黄色ラインの広範囲にわたって骨が新生している(黄星印)。8週間後の時点で、歯槽骨はほとんどもとの高さまで回復した(北海道大学などの発表資料より)

リン酸化プルランをキーマテリアルとした歯科用人工骨の治療効果(動物実験結果)。リン酸カルシウム顆粒や臨床で行われている歯周治療法を施しても、コントロール(未使用)の場合と同様に歯槽骨の回復は困難だが、リン酸化プルラン含有人工骨を用いると、黄色ラインの広範囲にわたって骨が新生している(黄星印)。8週間後の時点で、歯槽骨はほとんどもとの高さまで回復した(北海道大学などの発表資料より)[写真拡大]

 北海道大学の吉田靖弘教授や岡山大学らによる研究グループは、リン酸化プルランとリン酸カルシウムを混合することにより、歯や骨に強固に接着する人工骨の開発に成功し、これを実用化するベンチャー企業「メディカルクラフトン株式会社」を設立した。

 歯周病やインプラント周囲炎では、周りの骨を溶かすことが問題となっているが、従来から用いられている歯科用人工骨である顆粒状のリン酸化カルシウムは、体内で吸収されて骨に置き換わるのに数年必要であることから、歯やインプラントの周りなど感染しやすい部位の治療には不向きであった。

 今回の研究では、独自に開発した多糖誘導体リン酸化プルランをキーマテリアルとした新しい人工骨を創製することに成功した。リン酸化プルランは、生体内での親和性と安全性を持ち、歯や骨に接着する新しい材料で、それを骨の無機成分に近いリン酸カルシウムと混ぜ合わせることにより、吸収と骨置換を短期に達成する非硬化型ペースト状人工骨や、高い接着性を示す硬化型人工骨など、従来のリン酸カルシウム系人工骨の問題点を改善したさまざまな人工骨が実現できることが分かった。

 今後は、設立したベンチャー企業で開発を加速するとともに、まず歯科用途で実用化し、その後に整形外科や脳外科用途へと展開することが期待されている。

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