米国株式市場見通し:雇用統計が発表、利上げ時期を注視

2015年3月28日 18:58

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記事提供元:フィスコ


*18:58JST 米国株式市場見通し:雇用統計が発表、利上げ時期を注視

連邦公開市場委員会(FOMC)以降、早期利上げ観測後退を好感した買いが継続し小幅上昇して始まったものの、2月消費者物価指数(CPI)が前月より上昇、インフレによる早期利上げへの警戒感が強まったほか、堅調な経済指標を背景に為替相場でややドル高が進行し、下落する展開となった。週半ばに入ると、2月耐久財受注が市場予想を大きく下回ったことで景気後退懸念が拡大し、急落となった。特に業績成長への期待が高いバイオ関連やハイテク関連各社に幅広く売りが広がり、下げ幅を拡大した。週末にかけては、10-12月GDP確定値が市場予想を下回ったものの、3月ミシガン大学消費者信頼感指数確定値が市場予想を大幅に上回ったことで、小幅上昇となった。結局、週を通じて主要株価指数は下落した。

自動車のゼネラル・モーターズは、新型車の生産の為、メキシコに3.5億ドルの投資を行うことが発表され軟調推移。クレジットカードのアメリカン・エキスプレスは、株主総会でCEOが今後の事業計画について説明を行ったが、投資家の懸念を払拭するには至らず軟調推移となった。原油価格の上昇を受けて、アメリカン航空など航空各社が下落。電気自動車のテスラ・モーターズは、アナリストの投資判断引き下げを受け、下落した。フラッシュメモリのサンディスクは、売上見通しの引き下げが嫌気され急落。一方で、食品のクラフトフーズ・グループは、ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ(BRK.B)と投資ファンドが買収した同業ハインツとの合併合意が報じられ、急騰。短文投稿サイトのツイッターは、オンラインディスプレー広告市場でヤフーを抜き、3位に浮上する見通しが報じられ買われた。

3日(金)は聖金曜日で株式市場は休場。FOMC以降、利上げ時期を巡る市場予想は従来の6月から9月以降に傾いた。しかし6 月の利上げの可能性を完全に排除してしまうのは時期尚早だ。1-3月は西海岸での湾岸労働争議や北東部の暴風雪など一時的な要因もあり、経済指標が下振れることが多かった。3月半ばからは天候も改善しているため、4 月以降に発表される経済指標は好調となる可能性が高い。連邦準備制度理事会(FRB) のフィッシャー副議長は先週開催した講演の中で、利上げ開始に向けて労働市場の統計が重要となるとの考えを示した。今週発表される雇用統計を含めて、雇用情勢の改善が続いた場合、再び6月利上げが意識されてくる展開も予想される。

経済指標では、2月個人所得・個人支出(30日)、3月消費者信頼感指数(31日)、3月ADP雇用報告(1日)、3月ISM製造業景況指数(1日)、3月雇用統計(3日)などの発表が予定されている。3月雇用統計では、失業率が前月の5.5%から更に低下を示すかどうかが焦点となりそうだ。

個別企業では、種子メーカーのモンサント(1日)や半導体メモリーのマイクロン・テクノロジー(2日)の決算発表が予定されている。1-3月期が終了することで、今週から業績修正が飛び出しやすい時期となる。決算発表シーズンは4月半ばに本格化するが、先日発表された2月耐久財受注の下振れが海外経済動向やドル高の影響に起因していた可能性があり、企業決算への懸念が出始める可能性もある。

一方で株式市場は需給的には買い優勢の時期に入る。アメリカでは4月15日が確定申告の期限であるが、申告所得と共に非課税の退職積立金額が確定し、その資金が株式市場に流入しやすくなるからだ。4月の決算シーズンを通じて、ドル高や原油安によって決算で業績が下振れる企業が散見される可能性はある。しかし、そもそもドルや原油価格の動向が企業業績に与える影響は一時的な色彩が強いものだ。下値では前述のような買いが待ち受けていることも勘案すると、かえって買いの好機となる可能性が高い。

(Horiko Capital Management LLC)《TN》

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