【コラム 山口利昭】コーポレートガバナンス「コード」の意味を二つの比較から考える

2015年3月11日 17:11

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【3月11日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

 毎年恒例の日本監査役協会における春の講演もいよいよ佳境に入りまして、東京3日連続講演の初日が終了いたしました(本日は明治記念館で、あと二日は東京プリンスです)。本日も500名を超える監査役の皆様にお越しいただきまして、どうもありがとうございました(4年前は震災後の開催ということもあり、明治記念館の閑散とした雰囲気の中で講演をさせていただいたことが想い出されます)。本日は特別にガバナンスコード原案を活用した「社外取締役を置くことが相当でない理由」の一例をご披露させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。

 さて、今年の春の日本監査役協会全国会議では、有識者会議の重鎮でいらっしゃる神田教授が「コーポレートガバナンス・コード」について解説をされるそうで、おそらくたくさんの監査役の皆様が聴講されると思います(楽しみですね)。私は金融庁HPに毎回アップされます議事録で内容を確認をしていただけにすぎない者ですが、東証規則に反映された後の実務対応にはとても関心を持っています。とくに日本の企業社会に「コード」が根付くのかどうか、過去2回、2007年にはJ-SOXにおいて、そして2010年にはIFRS適用において金融庁から「プリンシプルを理解するための11の誤解」といったリリースが出て世間の混乱を収束させましたが、またそういったことにならないのでしょうか。

 先日アップしました「日本型人事ガバナンスと社外取締役の役割」なるエントリーにコメントしていたたいでいる「いたさん」のご意見のように、今回「コード」を理解するためには、「二つの比較」が理解を助けるように思います。一つ目の比較は、いたさんのように、どうして法務省の会社法改正パブコメ回答は懇切丁寧なのに、金融庁パブコメ回答はアバウトなのでしょう。そして二つ目の比較はガバナンス・コードへの日本人の意見と海外からの意見との比較です。(私も含めて)日本人は横並びが好きだなぁ、従うべき明確なルールが好きだなぁと感じます。それぞれの比較の中から、ルールベースとプリンシプルベースの考え方の違いのようなものが垣間見えてくるのではないでしょうか。

 私もコードについて詳しく理解をしている者ではありませんが、あのJ-SOX導入時の混乱の渦中でいろいろな経験をさせていただいた一人であることは間違いありません(金融庁のラウンドテーブルにも登壇させていただき、記念のトロフィーをいただきました 笑)。今後いろんなところで「ガバナンス・コードの実務対応」といった研修や講演が開催されると思うのですが、またJ-SOXと同じ混乱に陥ることだけは避けていただきたいと祈念しております。ここが「スチュワードシップによる対話」が成功するか否かの分水嶺だと思います。もし失敗すれば、機関投資家もエンゲージメントによる「羊の対応」ではなくエージェンシー理論による「狼の対応」に戻ってしまうはずです。今回は「国策ガバナンス」ということですから、おそらくそのあたりは国を挙げてプリンシプルによる制度運営を確保するとは思いますが・・・。【了】

 山口利昭(やまぐち・としあき)/山口利昭法律事務所代表弁護士。
 大阪府立三国丘高校、大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(平成2年登録 司法修習所42期)。現在、株式会社ニッセンホールディングス、大東建託株式会社の社外取締役を務める。著書に『法の世界からみた会計監査 弁護士と会計士のわかりあえないミソを考える』 (同文館出版)がある。ブログ「ビジネス法務の部屋」(http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/)より、本人の許可を経て転載。

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