新しい抗生物質の開発が鈍化しているという問題

2015年3月2日 17:09

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記事提供元:スラド

eggy 曰く、 米疾病管理予防センターによれば、米国では、抗生物質の効かない細菌感染で亡くなる人の数が年間2.3万人にも上り、こうした感染症の治療にかかる費用は年間200億ドルにもなるとのこと。こうした状況のなか、新たな抗生物質の開発が遅れている問題が指摘されている(SlashdotNew York Times)。

 FDA(米食品医薬品局)が認可した抗生物質の数は過去20年間で減少し続けているそうだ。その背景に、大手製薬企業が抗生物質の開発を行わなくなっていることがあるという。製薬業界の最大手であるファイザー製薬は2011年に抗生物質研究センターを閉鎖しており、現在、抗生物質開発の80%を中小のバイオテクノロジー企業が担っている。現在開発中の抗生物質は40種ほどあるものの、癌の臨床治験が実施されている新たな治療薬及びワクチンが771種もあることと比べると、非常に少ないことが分かる。

 これには、採算性の問題が根底にあるという。コレステロールや高血圧のための薬や糖尿病のためのインスリンなどは毎日投与されるものだが、抗生物質の投与は短期間に限られる。特に、薬物抵抗性を持つ細菌向けに新たに開発された抗生物質ともなれば、その使用は厳しく管理された状況に限られてしまい、結果として販売量も限られることになる。

 これを解決するため、賞金制度を設けるというアイデアも出ている。たとえば新種の細菌に対する抗生物質を開発して認可された最初の5企業または研究センターに対して、米政府が(欧州連合及び日本と協力して)20億ドルの賞金を提供するといった仕組みが考えられるそうだ。

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