京大、ニホンザル初の社会的慣習(抱擁行動)を発見

2015年2月15日 18:21

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屋久島ニホンザルの体側抱擁(京都大学の発表資料より)

屋久島ニホンザルの体側抱擁(京都大学の発表資料より)[写真拡大]

  • 金華山のニホンザルの対面抱擁(京都大学の発表資料より)

 京都大学は10日、理学研究科中川尚史准教授らの研究グループが、ニホンザルでは初めて、挨拶行動の文化と呼べる社会的慣習「抱擁行動」がみられることを発見したと発表した。この研究成果は、シカゴ大学出版局発行の学術誌「Current Anthropology」(2月発行予定)に掲載される。

 今回研究チームは、宮城県金華山島と鹿児島県屋久島のニホンザルがこれまで報告のなかった奇妙な行動をすることを発見した。この行動は、主にはオトナメス同士が向き合って座り、互いの腕を相手の体に回して抱き合う行動で、唇を突き出し気味にしてリズミカルに小刻みに開閉する「リップスマック」という表情に、「グニュグニュグニュグニュ」と聞こえる「ガーニー」と呼ばれる音声が伴う。

 この抱擁行動は、いずれの地域でも、毛繕いの中断、闘争、あまり仲の良くない個体同士の接近直後など、個体間の緊張が高まった状況で起こり、その後は毛繕いに移行することから、研究チームは「緊張緩和の機能がある」と考えたという。

 しかし、抱擁の仕方には地域間で違いが認められた。一つめの違いは体の向きで、金華山では上述の対面だけだが、屋久島では対面に加え、片方が他方の体側から抱きつくことが多く、背中側から抱きつくこともあった。そしてもう一つの違いは、金華山では抱き合った体を前後に大きく揺するのに対し、屋久島では体を揺する代わりに相手の体を掴んでいる掌を開いたり閉じたりするという。

 以上のような抱擁の仕方の違い、あるいは抱擁行動の有無の地域差は、環境の違いや遺伝的な違いによっては説明できそうにないことから、たまたま特定の地域で特定の仕方の抱擁行動が始まり、それが社会的に伝達していった文化であろうと考えたという。

 研究チームは、今回の研究をきっかけとして霊長類や他の動物の社会的慣習に目が向くことが期待されるとしている。また、ニホンザルの行動の地域間変異に着目した研究が増えることを期待しているという。(記事:町田光・記事一覧を見る

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